「聞かれたら“大丈夫”って言うしかない」なだぎ武が学生時代のいじめを誰にも相談できなかった理由 #今つらいあなたへ
自分で「よし」と思うタイミングが来たら、勇気を出して信頼できる人に相談してみて
――いじめられているときに、どうしたら周りの人などに相談しやすくなると思いますか。 なだぎ武: いじめられている本人は自分からなかなか相談できないと思います。周囲への不信感が募っているので「相談窓口に電話したらいいよ」と言われても、勇気が出ない。でも、自分では言葉にできないSOSを発しているつもりなんですよね。それを周りの近しい大人がいかに汲み取って、うまいこと誘導してあげられるか。これしかないと思います。 ただ、いじめられている子自身も、どこかで自分の環境を変えてみようとする努力は必要だと思うんですね。今いる世界の一歩外に出てみないと、外の景色がわからないし、次には進めないので。無理はしなくていいんですけど、自分で「よし」と思った瞬間があれば、誰かに相談したりだとか、窓口に電話したりすることにも挑戦してみてもいいかもしれません。自分の場合は、映画を観ることと一人旅に出ることでしたけど、人それぞれのタイミングとやり方があると思うので。 ――もうすぐ夏休みが終わる時期が近づいています。何か事情があって学校に行きたくないというお子さんもいるかもしれませんが、なだぎさんはそんなお子さんにどんな言葉をかけたいですか。 なだぎ武: それは本当に難しいですね。僕は学校に行きたくなければ行かなくていいし、逃げたければ逃げたらいいよって思うほうなんですよ。でも、行かない選択をして、何もしない時間があるんだったら、自分自身で視野を広げようとしてみてもいいかもしれませんね。 今なんてね、僕の時代と違ってパソコンもスマホもあるわけですから、いろんな情報を仕入れられるじゃないですか。ゲームでも映画でも漫画でも何でもいいので、自分の中で「あっ」と思ったことは勇気を出して行動に移したほうがいい。来るべきタイミングが来たら何かが変わるかもしれないし。 僕は一人旅をしたとき、親以外の人に親切にされたり、人に何かを尋ねたりする中で、自分がレベルアップする感覚もありましたし、「人と関わっていくのってめちゃくちゃ大事だな」と思えたんですよね。 ――学校に行かないという選択をしたお子さんに対して周りの大人はどう接していくべきだと思いますか。 なだぎ武: やっぱり無理させることが一番のプレッシャーになるんですね。子供は経験もキャパシティもないので、いろいろな経験を積みながら少しずつ視野を広げていく時間が必要。大人は子供のそうした成長を待つ努力も大切なのかなと思ったりします。 親も心配が勝ってグーッと距離を詰めがちになると思うんですけど、子供にとってはそれがすごくプレッシャーになって、かえって距離をとられてしまうこともある。 いきなり「大丈夫か」と聞いても、「大丈夫」って言うしかなくなるので「こないだおいしい店を見つけたから食べに行こうか」とか声をかけてみて、安心できる時間を作ってあげるのがいいのかなと。「この人に相談してもいいかも」という心の余裕を与えることができたら、多分向こうから相談してくると思うので。僕が学生時代に同級生にしてもらったみたいに、「同じ目線に立って待つ」を心がけたいですね。 ----- なだぎ武 お笑い芸人・俳優。大阪府堺市出身。1989年4月、NSC大阪校に8期生として入学。2002年にザ・プラン9に加入し、2006年には「M-1グランプリ」の決勝に大会初の5人組として進出した。2007年と2008年には「R-1ぐらんぷり」で優勝。大会史上唯一の2連覇を果たした。現在は俳優としても活動し、活躍の幅を広げている。 文:佐々木ののか 制作協力:BitStar 本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。 「#今つらいあなたへ」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。つらい気持ちを抱えた人の「生きるための支援」につながるコンテンツを発信しています。