930/993/996 ポルシェ911 ターボ 3台乗り比べ(2) リアウイングを正当化する爆発的パワー
高回転域で劇的サウンドを撒き散らす930型
そんなダークグリーンの930型は、機械的な雰囲気が濃く、果てしなく魅力的。最高出力は259psで、本で読むほど気難しいマナーではない。高精度なシャシーが、急激に高まるパワーデリバリーを親しみやすいものにする。 何より軽さが強みで、車重は1140kg。993型比で360kgも軽い。996型は1540kgある。そう考えると、650psで歴代最速の992型ターボSは1640kgだから、重すぎとはいえないだろう。 この3台は、ターボが強化するパワフルさで共通する。だが、930型はちょっと悪びれた生涯の友人といった感じ。996型は、飛行機の操縦室でパートナーを組みたい友だち。993型は、一緒に飲み歩きたい幼馴染みといったところ。 それに対し992型は、ブースト感が弱い。2016年以降は、通常のカレラにもターボエンジンが載り、「ターボ」の特別感も薄まった。結果として、往年のヒーローは一層輝いて見える。 911 GT1由来エンジンが生み出す996型のトルクは、際立って刺激的。可変バルブ機構、バリオカム・プラスの効果でレスポンスは鋭く、線形的なパワー感が気持ちいい。 930型の3.0Lフラット6は、高回転域で劇的なサウンドを撒き散らす。パワーバンドが狭くても、思いきり楽しい。機械だが、野生動物のような味わいがある。2500rpm以上へ引っ張れば、景色が霞む勢いで突進してみせる。 その間に作られた993型は、印象もその中間。413psは、2024年では驚くような数字ではないものの、実際は熱狂的。ブースト上昇時に表出するエネルギッシュさは、最高以外の何物でもない。930型より扱いやすくもある。
リアウイングを正当化してきた爆発的な速さ
半世紀に渡って、目的地までの道を縮める爆発的な速さが、911 ターボの核心にあった。リアでそびえ立つウイングを、正当化してきた。 電動化が進む中、ポルシェは未来の911 ターボ像をどう描いているのだろうか。バッテリーEVにとって、息が詰まる勢いの加速は目新しいものではない。同時に内燃エンジンも進化を果たし、ターボラグはほぼ無視できるようになっている。 興奮を求めたとしても、ブースト圧を故意に高めた911 ターボが登場することはないだろう。より、個性を深めることが重要なのかもしれない。濃い味の歴代3台ヘ試乗し、そんな事を考えた。