中谷潤人が感銘を受けた袴田巌さんの姉・ひで子さんの言葉 きょうだいの闘いに思いを新たに
1966年に静岡県の一家4人が殺害された事件で再審無罪が確定した元プロボクサーの袴田巌さん(88)が先月29日、後楽園ホールを姉のひで子さん(91)と訪れ、9年ぶりにボクシングを観戦した。この日、場をともにしたWBC世界バンタム級王者の中谷潤人(26)は、感銘を受けたひで子さんのある言葉を明かした。 【写真】袴田巌さんと姉・ひで子さん「58年戦ってやっと勝ちました」 ひで子さんはこの日、日本ボクシング協会の新田渉世・袴田巌支援委員会委員長(57)、支援活動に参加してきた中谷らとリングインし、再審無罪を報告。中谷はフロアで見つめていた袴田さんに近寄って「おめでとうございます」と声をかけた。袴田さんとは初対面で「お会いできて、すごく力をもらいました」といい、きょうだいとの記者会見後、感銘を受けたひで子さんの言葉を明かした。 畝本直美検事総長は10月8日に発表した談話内で、再審無罪の判決を「到底承服できないもの」としたが、先月27日には静岡地検の山田英夫検事正が袴田さんきょうだいのもとを訪れて謝罪した。 謝罪の様子をテレビで見たという中谷は「お姉さんが、冤罪(えんざい)の方もまだまだいるからということで、巌さんのことだけじゃなくという言葉を言われていたのに対して、なんて心が広いことを、言えること自体がすごいという…長く戦えるのは、心も広くないと戦っていけないんだな」と、ひで子さんの言葉に心を揺さぶられたことを打ち明けた。 ひで子さんは会見でも「(検察を)許すも許さないもない。検事総長さんのおっしゃったこと、私は検察庁の都合でああおっしゃったんだと思っている。巌は無実であるから無罪になって当たり前だと思って闘っておりましたので、そんなことは問題にしておりません」と語り、今後についても「冤罪の被害者は多い。一人でも早く再審開始になるように、再審法改正もそうですが、すべからく関わっていきたい」と言い切った。 きょうだいに過酷な運命を強いたのは検事総長や検事正といった個人を超えたシステムであり、それが今も強固であることが、ひで子さんには見えているのだろう。 中谷はこの日の経験を「すごくありがたいことですし、すごくいい瞬間をともにさせてもらった」と振り返り、「今、僕ができることを精いっぱい頑張っていかなきゃならないなとすごく思います」と、きょうだいの闘いに思いを新たにしたよう。 「僕自身もボクシングは人生を発揮する場所だと思っているので、そういったところも見ていただいて、何か感じていただければうれしい」と、袴田さんに自身の試合を見てほしいと望んだ。 この日の袴田さんは、体の調子もあって、通路から2試合を観戦するにとどまった。来年にも、中谷のタイトルマッチを観戦する機会が実現してほしいと思う。(デイリースポーツ・藤澤浩之)