IWGP防衛戦で右ヒジ脱臼→緊急搬送のママさんレスラー、5時間ハマらず悲鳴「でも陣痛よりは痛くない」
岩谷麻優にIWGP王者としての器を感じた
――試合後、医務室に入ってからはなかなか出てきませんでした。 「脱臼だったので、まずは固定して、救急車を待っていたんですよ。そのなかで岩谷麻優も来てくれたので、謝りました。『ホントにごめん』って」 ――まあ、しょうがないですもんね。 「悔しいです。私としては、しょうがないではまだ消化しきれないというか……。あんな、作っても作れないような舞台、対抗戦だったし、なおかつIWGPっていう、女子で1番にしていかなきゃいけないベルトだと思っているので。あの状況のなか、岩谷麻優がマイクでああいう言葉選びをしてくれたセンスというか、岩谷麻優のIWGPのチャンピオンとしての器を感じました」 ここで岩谷の言葉を書き記すと、6度目の防衛を果たした岩谷は、リング上で藤本に対し以下の言葉を投げかけ、挑戦者をねぎらった。 「藤本つかさ、痛いよね。自分も赤いベルト(ワールド王座)、開始2分30秒でヒジを脱臼してチャンピオンを剥奪されたことがあって。あなた、よく今、リングに立ってられるね。すごいね。やっぱ、とんでもねえわ。あなたはやっぱりアイスリボンの象徴。戦ってあなたの強さ、感じることができました」 さらに「正式にあなたから勝って女子プロレスのアイコンだと言いたかったけど、引退しちゃダメだよ。全然、まだまだ先。限定復帰とかじゃなく、またケガ治して。その時までチャンピオンでいるから、このベルトをかけてもう一度闘ってください」と呼びかけ、藤本の左手を握った。 ――試合前には、IWGP女子王座がアントニオ猪木のつくったベルトの流れを汲むことから、藤本さんは猪木家の墓(横浜・鶴見にある大本山總持寺)に墓参りに行かれていたし、いつも以上にガッツリ試合をしなければ、という意識はあったんですかね。 「もちろんIWGPに権威はあります。ただこの闘いにはなんというか、“アイスリボンの象徴”VS“スターダムのアイコン”とか、お互いの誕生日(岩谷の誕生日の2月19日と藤本の誕生日である7月30日)がともに『プロレス記念日』だったとか、似た境遇の二人が対戦することとか、ともにデビューからずっと同じ団体にいて、背負ってる意地、そういう部分がすべてIWGPのなかに含まれていた気がしますね」 ――変な言い方かもしれないですけど、最近のプロレス界はとくに、女子に目が行くことが増えた気がします。 「女子は感情と感情のぶつかり合いがエグいですよね。『女子プロレス』だから好きなんですけど、私は」 ――最近は、男子より女子のほうが、リミッターをあっさり超えた、激しい感情のぶつかり合いが見えるような……。 「私の周りの女子レスラーは『プロレス』じゃなく、いつも『女子プロレス』って言うんです。『女子プロレス』は生き様とかリアル過ぎる感情が見える気がして。全部をさらけ出せるというか、出させられる。そういう意味では今回の悔しさもそうなのかな……。まだ受け入れられないけど、人間誰しも持っている、カッコつけて隠したがるところもさらけ出すのも『女子プロレス』なら、もうとことん人生さらけ出しますよ、女子レスラーになったからには(笑)」 ――そんな藤本さんですけど、実は今、1歳のお子さんを絶賛子育て中のママさんじゃないですか。 「そうですね。家に帰ってきて、子どもを抱っこできなかったのがちょっとツラかったですね……」