「『ガチなやつがいる』と鞘師里保に注目していた」映画『十一人の賊軍』白石和彌監督、作品とヒロインに込めた思いを語る
「一撃で決まった気がしました」 賊軍唯一の女性キャスト・鞘師里保のキャスティング
―――今回は男性の戦いを描いていることもあり、男性俳優が多くキャスティングされていますが、その中でヒロインを演じられた鞘師里保さんは、まっすぐな信念を持つ強い女性を演じておられます。鞘師さんをキャスティングされたのは、白石監督だったのでしょうか? 「賊軍たちには、いろんな背景や属性を持つキャラクターが必要だと思ったんです。で、歌舞伎俳優や相撲取り、お笑い芸人をキャスティングしていく中で、キャスティングチームが『この方はどうですか?』と鞘師さんの名前挙げてくれました。アイドルとして数々の伝説を作り続けているのは知っていたので、芝居できるかな、と色々思いながら会ってみたら、もう一撃で決まった気がしました」 ―――鞘師さんの存在はいつ頃から知っていたのでしょうか? 「鞘師さんのことはアイドル時代から知っていました。1人だけすごい存在感があって、『ガチなやつがいる』と、注目していました」 ―――鞘師さんにとって、今回が本格的な演技デビューということでしたが、山田孝之さん演じる政とのシーンなどでは、どのようにディレクションをされたのかお聞きしたいです。 「彼女は唯一の女性キャラクターですが、“女性である”ことを特別に強調する必要はないと考えました。仲間と同じように、どうしても自分ができることを全力でやっている人ななのかなと。政は主人公でありながら、みんなを裏切って逃げようとすることがあるんです。それは家族に会いたいからですが、その気持ちを(鞘師里保演じる)なつだけは、少しだけ理解しているようなニュアンスを持たせたいという話をしていました」 ―――これだけキャストが多いとひとりひとり向き合って演出するのはかなり難しかったのではないかと思います。 「そうですね。正直、群像劇は得意なんですが、やっぱり大変でしたね。普通の群像劇って、こっちに5人いて、別のグループに3人いて…という風に、それぞれの集団が別々なんですが、この映画の賊軍側は常に10人以上が一つのシーンにいて、本当に大変でした。めちゃくちゃ大変でした」 ―――撮影監督の池田直矢さんとは『死刑にいたる病』(2022)以来の再タッグとなりました。白石監督としても信頼感のある現場だったのではないでしょうか? 「そうですね。池田さんの素晴らしいところは、撮りたい画が明確にあることなんです。指示された範囲内で正確に撮影を進めるカメラマンもいますが、池田さんは違います。気づいたこと、彼が本当に撮りたい画をもちろん相談してくれることも多いですが、こっそり撮っといてくれたりする。そういう画に本当に助けられました。特に、十数人ものキャストがいるシーンでは、全員の芝居を同時に完璧に見られるのは難しい…不可能に近いですよね。だからしっかりビジョンを持っている池田さんには本当に助けられました」