「『ガチなやつがいる』と鞘師里保に注目していた」映画『十一人の賊軍』白石和彌監督、作品とヒロインに込めた思いを語る
山田孝之の存在がもたらす現場の士気と調和
―――本作で主演を務められた山田孝之さんとは、2013年に公開された映画『凶悪』以来、約11年ぶりのタッグとなりました。 白石監督から見て、山田さんの役者としての魅力をお聞きできればなと思います。 「当時と比べて、山田さん自身が監督やプロデューサーなどクリエイターとしての活動も多く懐が広く頼もしかったです。ただ、役に対するストイックさや映画に対する真摯な姿勢は全く変わらない、むしろ研ぎ澄まされているように感じました。山田さんの演技の作り込みの深さは本当に素晴らしいと思います」 ―――では山田さんが現場にいることで、全体の士気も上がったのではないでしょうか? 「そうですね。他の役者さんも最初に、山田さんがどんな芝居をするか注目していると思います。山田さんがどう考えて、どういった意味の芝居をするのかを探りながら、周りの俳優も演技を調整していくんですよ。スタッフも同様に、山田さんの演技に合わせて、その雰囲気に合った調整をしている気がします」 ―――主演を務めた山田さんの存在によって、全体のトーンを調節し、全員が同じところを向いて進められていたんですね。山田さんとW主演を務めた仲野太大賀さんは、本作のラストで、絶望や怒りなど、色んな感情が滲み出ている見事な殺陣を見せます。絶望的な状況でも戦い続ける姿を描くシーンの演出について、こだわったポイントを教えてください。 「どんな状況に陥っても、敵に一泡吹かせないと、死んでも死にきれないという感情を描きたかったんです。死ぬのが分かっていても突っ込んで、最後はハチの巣になって終わる、アメリカンニューシネマのような、そういう映画が好きなんですよ。血まみれで、のたうち回りながら戦っていくという展開が特に(笑)」 ―――仲野さん演じる鷲尾兵士郎と阿部サダヲさん演じる溝口の対決を描いたシーンでは、それまでとは異なる演出をなさっています。この2人の対決は元々のプロットにもあったのでしょうか? 「戦闘の詳細や、どのように戦うか、溝口はあの場にも行ってなかった気がします。ただ、あのシーンは、物語が進んでいく中で生まれた溝口の感情を考えて制作しました」