認知症の柴犬を介護する猫 飼い主が忘れられない「二匹の別れの時」
元の飼い主の面影を探していたしの
――続いて、くぅちゃんが大好きだった柴犬の"しのちゃん"について教えていただきだいです。 【晴】しのとの出会いは2011年、道路の真ん中を走り渋滞を起こしていたところを保護しました。しのは元々飼い犬だったようで、保護したときは首輪をしていました。でも、ドブみたいな匂いがするかなり古びた首輪だったので、前の飼い主さんから離れて時間が経っていたのだと思います。当時は推定10歳くらいでした。 保護したあと、ご近所さんから聞いたのですが、毎日のように遠くの方からうちの近所まで走ってきて、犬を散歩させている人などからおやつをもらって生活していたみたいなんです。 ――それは...犬を飼ったことのある身として胸が痛みます... しのちゃんはどのような性格の子だったのでしょう? 【晴】穏やかなんですが、ずっと独りだったからか寂しがりやなところがありましたね。野良時代に何があったかは分からないのですが、猫に威嚇されると「キューンキューン」と怯えて。だから猫はあまり好きではなかったですね。 人間と他所の犬に対しては興味をあまり示さずクールな印象でした。でも、通りすがりの見ず知らずの親子のことは、いつも見つめていましたね。それも、決まって自転車に乗っているお母さんと小学校低学年くらいの男の子の組み合わせで... 2人が視界からいなくなるまでずーっと見ていました。 だから、そういった家族に飼われていたんじゃないかなあと思っています。 あと、何して遊ぶんだろうって色々試してたんですが、鬼ごっこだけは喜んでやってくれました。私がしののことを追いかけて、タッチしたらしのが私を追いかけて...を繰り返しやっていましたね。前の飼い主とかつてこうやって遊んでいたのかもしれません。
くぅがしのに一目ぼれ
――くぅちゃんがしのちゃんを介護する姿でも話題になりましたが、2匹の最初の出会いはどのようなものでしたか?本には2013年の夏、くぅちゃんの一目ぼれから始まったとありましたね。 【晴】2匹が出会ったのは、それぞれを保護してしばらく経ってからでしたね。当時私は実家にいたんですけど、母が犬が苦手で、しのは庭で飼っている状況でした。 ある時、くぅは窓越しに偶然しのを見つけたんですが、その時のくぅの瞳はもうキラッキラでしたね。写真に残しておけばよかった。ちゅ~るを見てもあんなにキラキラにはならなかったのに...笑 雨や雷などで天気が悪いときはしのを玄関に入れて寝かせることがあって、そこで2匹が直接会えていたわけなんですが、くぅがしのにまとわりついて... しのは元々猫が嫌いだったので、キュンキュン泣いたり、怒って吠えたり、玄関の隅にいって寝たり、必死に避けていました。 でも、くぅはめげない性格なので吠えられてビクッてするものの、しのが落ち着いたらまた近づいていましたね笑 その後私が引越してしのも室内飼いになり、引っ付いてくるくぅにしのが折れる形で一緒に居るようになりました。 ――引越し後、しのちゃんに認知症の症状が見られたそうですね。 【晴】しのは保護してから5年くらいで認知症になってしまいました。室内飼いになって、穏やかに暮らせることに安心したのかもしれません。 徐々に段差を乗り越えられなくなり、目を離すと家具の間に挟まるようになりました。後ろ歩きができないので、挟まったまま鳴き続けていました。呼んだら振り向いたりはするんですけど、身体は動けないので鼻に傷がついてしまったり、目が離せなかったです。