認知症の柴犬を介護する猫 飼い主が忘れられない「二匹の別れの時」
くぅは亡くなったしのに近づけなかった
――2018年3月7日、しのちゃんは急に容体が悪化して、病院で虹の橋を渡ったのですよね。その時のくぅちゃんや、他の猫たちの反応を改めて教えていただけますか。(こちらの記事にも詳しく書かれています) 【晴】しのが病院で亡くなって、その亡骸を連れて帰ってきたときは、みんな状況を察してずっと静かでしたね。病院で綺麗に処置してもらったしのを家で寝ていた場所にそっと横たわらせたら、猫たちが1匹ずつ寄ってきて顔を近づけて、まるでお別れの挨拶をしているようでした。でも、くぅだけは呼んでも近づくことができなくて、離れた場所から怯えたようにこちらを見ているだけでした。 一晩経って、ようやく自分から側に寄り、しのの顔を覗き込むことができました。それが2匹の別れでしたね。その瞬間は悲しくて、いまも深く心に刺さっています。 それからしばらく、くぅは塞ぎ込んでしまいました。元々やんちゃな食いしん坊で面白くて、家の中心的な存在だったんですが、しのが亡くなる3か月くらい前から体調を崩すようになっていました。しのの最期を感じていたのかもしれません。 亡くなった後もくぅはずっと独りで、遊ぶことも走り回ることもしなくなって、暗く、寂しい場所でいつも丸まっていました。近づいて話しかければこちらを見てくれるのですが、表情は暗く悲しい目をしていました。人間のような子だったので、しのの死から色々と受け取っていたようです。 (取材・執筆 PHPオンライン編集部 片平奈々子)
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