じつに、5000個もある「太陽系外の惑星」。そこに生命の存在は見出せるか…認めざる得なかった「地球の生命システム」の独自性と多様性
生命システム自体の多様性と独自性を考える必要
今回の一連記事ではまず、地球での生物進化を振り返り、そこに、非生命が生命に至るまでの化学進化について学ぶものがあるか、考えてきました。生物進化については、化石という、進化の過程を記録したものが地球上に残っていて、さらに現存のそれぞれの生物種は、一つの樹の形で表される分子系統樹に沿って、約40億年間、進 化の歩みを続けてきたことがわかっています。 つまり、すべての地球の生物種はみな兄弟なのです。それぞれの生物種は、ある意味、それぞれの“専門領域”での進化の頂点にいるといえます。ヒトは「知性」の面で他の生物よりも優れており、それを武器に地球表層で最も繁栄している生物となりました。 しかし、個体数や種の「数」を指標として考えると、昆虫こそ地球で最も繁栄している動物でしょう。ヒトの人口は80億を超えたところですが、アリの個体数は2京ほど、つまりヒトの1億倍以上です。 アリよりもちっぽけな南極のオキアミは、1個体の重さで勝負すればヒトと比べものになりませんが、総重量でいえばヒトの4億トンを上回るといわれています。微生物も、植物も、なんらかの点でそれぞれ、ヒトをしのぐものを持っているのです。つまり、生物はそれだけ多様性と独自性に富んでいるのです。 そして、そうした生物進化では、たとえばチンパンジー→アウストラロピテクス→ネアンデルタール人→現生人類のような、一方向に向かう進化という考え方は、すでに否定されています。 では、化学進化はどう考えられているかといえば、そこではいまだに、ヌクレオチド→オリゴヌクレオチド→RNAワールド→RNPワールド→DNPワールドといった、一方向に向かう進化という考え方が主流になっています。 私たちがこのようなイメージにとらわれているのは、生命システムにはいろいろな形がありえるはずなのに、地球という惑星上ではそれらは淘汰されてしまい、現在の地球上にはたった一つのシステムしか残っていないためです。そろそろ生物の多様性とその独自性をみならって、生命システム自体の多様性と独自性を考えることが必要なのではないでしょうか。 ◇ ◇ ◇ 次シリーズでは、生命と非生命のあいだの壁を崩す「生命のスペクトラム」というテーマでお送りします。 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか 生命はどこから生命なのか? 非生命と何が違うのか? 生命科学究極のテーマに、アストロバイオロジーの先駆者が迫る!
小林 憲正