[MOM5000]堀越DF渡辺冴空(3年)_完封勝利に逞しく貢献!安定感抜群の“門番”が見据えるのは「冴え渡る国立の空のキャンパス」
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ Sponsored by アディダス ジャパン] [12.31 選手権2回戦 津工高 0-2 堀越高 駒沢] 【写真】福田師王が大胆イメチェン「ライオンじゃん」「圧倒的金ピカ」 気付けば、そこに背番号3がいる。危険な時間帯を、危険なスペースを察知して、確実に、丁寧に、1つずつピンチの芽を摘んでいく。それを涼しい顔でこなしていくのだから、相手のフォワードにしてみれば実に厄介だ。 「去年は2年生ということもあって、自分が引っ張っていこうという気持ちはそこまでなかったですけど、今年は3年生になりましたし、去年の経験もあるので、チームを引っ張っていこうという気持ちはあります」。 昨年の選手権も経験している、堀越高(東京A)不動のセンターバック。DF渡辺冴空(3年=FC府中U-15出身)の堅実に積み上げてきたディフェンス力が、1年ぶりに帰ってきた全国のピッチで存分に発揮された。 選手権2回戦。堀越にとっては初戦となる津工高(三重)との一戦のスタメンに、渡辺は当然のように名を連ねる。昨シーズンはベンチスタートが多く、選手権の本大会で定位置をもぎ取った格好だったが、最高学年になった今季は1年を通じて最終ラインの中央に君臨。パートナーのDF森奏(3年)とともにチームを最後方から束ねてきた。 「津工業が3バックで来ることはわかっていたので、それに対して自分たちがどうハメていくかは、試合前からみんなで決めていました」。相手の戦い方は共有済み。シミュレーションも万全。攻撃でも、守備でも、自分のやるべきことはしっかりと整理されている。 「奏はもう前へ、前へというタイプですけど、そこでちゃんと“門番”としていつも待っているのが冴空ではありますね」とはチームを率いる佐藤実監督。本人も「やっぱり奏は上がっていくことが多い選手なので、そういう時は中盤を下げたりしながら、うまく自分がバランスを取る感じですね」と話しており、役割分担も万全だ。 ただ、スコアレスで迎えた30分には決定機を作られてしまう。左サイドを崩され、枠へ打ち込まれたシュートはGK佐藤晴翔(3年)が何とかさわり、ゴールポストに弾かれたものの、「サイドをえぐられて、フリーでシュートを打たれたので、そこはやっぱりまだ力が足りないと思っています」と反省の弁も。改めて気持ちを引き締め直す。 なかなかスコアが動かない展開の中でも、焦りはなかったという。「焦らなかったのは去年の経験値が生きたと思いますし、たぶんみんなもそうだったと思います」。右からDF竹内利樹人(3年)、森奏、渡辺、DF瀬下琥太郎(3年)が並ぶ4バックは昨年度の選手権本大会から変わらない顔触れ。お互いの為すべきことは、お互いに過不足なく理解している。 後半13分に先制点を奪い、以降は落ち着いたゲーム運びで時間を経過させていく中で、一度だけ渡辺が“色気”を出しかけた場面があった。インターセプトで前に出ると、そのままエリア内へと駆け上がる雰囲気は醸し出したが、パスを振り分けた左サイドでいったん流れが停滞したため、やや後ろ髪を引かれつつ、元の持ち場へとゆっくり戻っていく。 「あそこは行き切りたかったですね。ちょっと迷いました(笑)」。もちろん自分でも結果は出したいけれど、最優先すべきはチームが勝つこと。ただ、一瞬だけピッチ上に現れた逡巡の瞬間に、サッカー選手としての本能が滲んだ。 ファイナルスコアは2-0。「無失点でしっかり勝ち切れたことが大きかったと思います。こっちがボールを持てましたし、相手を押し込んだ中で、相手のクリアボールも回収できたので、それが結果に繋がったと思います」。80分間にわたって打ち出し続けた渡辺の堅実な安定感が、この日の勝利を呼び込んだことに疑いの余地はない。 1年前の国立で戦った準決勝の1試合は忘れられない経験だ。近江高の猛攻にさらされ、前半だけで3失点。「国立は特別でした。入っている観客の人の数もそうですし、雰囲気が明らかに違いましたね」と振り返る渡辺も、本来の力を出し切れないまま、90分間が過ぎ去っていった感覚があった。 だからこそ、もうこの大会に悔いは残したくない。「去年の経験もあったので、今日はあまり緊張せずにできたかなと思います。でも、これが今年最後の大会なので、負けたら終わりというのもありますし、たぶん大学に行ってからも、ここまでいろいろな人が見ている中で試合をできる機会は選手権が最後だと思うので、他の大会とは違う想いがあります」。1つずつ勝利を重ね、またあの舞台に戻って、今度こそは納得のいく時間を過ごしてやる。 名前の『冴空=さく』はなかなか珍しい漢字。本人に由来を尋ねると、面白い答えが帰ってきた。「『冴え渡る空のキャンパスに……、何々……』みたいな感じです」。こちらとすれば「何々」が気になるところだが、そこは今イチ思い出せなかったようだ。 でも、きっとそれでいい。2024年の堀越を支え続けてきた、絶対に欠かせない守備の要。彼らが再び準決勝まで勝ち上がっていくのであれば、『冴え渡る国立の空のキャンパス』に何を描くのかは、渡辺自身がその時に感じた色で、感じたものを描けばいい。 高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチおめでとう!アディダスはサッカーに打ち込むすべての部活生を応援しています。 (取材・文 土屋雅史)
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