一度は清算したふりかけメーカーを背負う3代目 「飛ぶように売れた」プレミアム製品が再生の柱に
神戸市の澤田食品は、自社商品の9割をふりかけが占める異色の食品メーカーです。ソフトな食感が持ち味の「生ふりかけ」が特徴で、「いか昆布」などのロングセラーを生みだしました。2017年には経営悪化で一度は清算を余儀なくされ、2代目の息子の澤田大地さん(40)が「3代目」として、再生の道を探りました。大手企業のプライベートブランドを引き受けながら、高価格帯のプレミアムふりかけを再生の柱に据え、2024年にはおむすび専門店も開くなど、攻めの経営で売り上げを清算前より大きく伸ばしました。 【図解】世代交代の時が狙い目なリブランディング ポイントや具体例は
自社商品の9割がふりかけ
「実は当社は2017年に特別清算(清算型の倒産手続き)をしています……」 澤田さんは、そう切り出しました。 澤田食品は自社商品の9割がふりかけ、1割がおつまみという食品メーカーです。アイテム数はふりかけだけで約30種類にのぼり、魚介・海藻類を素材として使っています。 商品開発、素材の仕入れから製造・封入・梱包・発送まで一貫して行い、通信販売にも対応しています。従業員は約100人(うち正社員20人)。販路は商社とスーパーマーケットが半々で、長く消費者に愛されています。 年商は先代時代の9億円から大きく伸ばし、2023年度は16億円となっています。そこに至るまでは、荒れた海へ船を出すような苦労がありました。
祖父に感じた商売人のすごみ
澤田食品のふりかけの特徴は、柔らかな食感にあります。サラサラした顆粒ふりかけと違い、しっとりしているのです。3代にわたるロングセラー「いか昆布」は、アカイカのスライスがソフトな状態のままで「生ふりかけ」と呼んでいます。 「創業者の祖父が編みだした独自製法をもとに、改良を加えながら製造を続けています。私も幼いころから食べていて『よそのふりかけとは違う』と感じていました」 澤田食品は1961年、澤田さんの祖父・正夫さんが海鮮の乾物商として神戸市の新開地で創業しました。その後、舞子漁港のそばに移転し、1980年代後半にふりかけ「いか昆布」を開発し、澤田食品の代名詞になります。 澤田さんは幼い頃から舞子の作業場で遊び、祖父もその姿をほほ笑ましく見守っていたのだとか。 「初孫だったこともあり、祖父からとてもかわいがられました。祖父が運転するハイエースの隣にちょこんと座り、神戸市中央卸売市場の仕入れについていったこともあります。ただ祖父は市場へ行くと、やさしいおじいちゃんから険しいザ・商売人の顔に変わる。値段の交渉をするすごみ、豪快さに圧倒されました」