五郎丸が引退…W杯8強「ONE TEAM」誕生につなげた「ラグビーにヒーローは存在しない」の理念
昨秋のW杯日本大会。日本代表は『ONE TEAM』というスローガンを示した。様々な人種、背景を持った個性派集団が各自の仕事を全うし、初の8強入りで国民を熱狂させた。 五郎丸は代表に選ばれなかったが、くしくもイングランド大会時、現在の日本代表の理念に通じる談話をいくつも残していた。例えばこんな風に。 「ラグビーにヒーローは存在しない。皆、1人ひとり仕事を全うしている」 歴史的勝利を挙げた南アフリカ代表戦後には、ツイッターで「ラグビーが注目されている今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ。国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ(原文ママ)」と投稿。スコットランド代表戦後に真意を述べた。 「(日本代表の海外出身者への理解は)2019年に向けて、クリアしなきゃいけない問題だったと思うんです。ラグビーは特殊なので、どうしても『何で外国人が入っているんだ』という観られ方をする。ただ、(自身のツイートによって)メディアの方にそこ(日本代表の海外出身者)へ注目してもらうことで、『ラグビーはそういうものなんだな』と理解されやすくなる」 五郎丸が時代の要請で「ヒーロー」と遇された日々から4年後、体制が変わっていた日本代表は、五郎丸の語った「ラグビーにヒーローはいない」という普遍を体現。さらに31人中15人いた海外出身者も「ラグビーはそういうもの」と温かく歓迎された。 イングランド大会後に日本代表を離れた五郎丸がその時々に発した思いは、日本ラグビー界の理想の未来と重なっていた。 引退後の動向についても注目される稀代のビッグネーム。きっとこれからも、日本ラグビー界きってのメッセンジャーとして期待を背負うのだろう。 (文責・向風見也/ラグビーライター)