福島第一原発の高線量「土のう」、来年2月までに回収に着手へ…被曝リスク減らし廃炉作業を加速
東京電力は来年2月までに、福島第一原子力発電所の建屋にある高線量の土のう(約1300袋、計約26トン)の回収に着手する方針を決めた。作業員らが原発構内で被曝(ひばく)するリスクを減らし、廃炉作業のスピードアップを目指す。 【ひと目でわかる図解】ゼオライト回収作業の流れ
回収する土のうには、放射性セシウムを吸着する鉱物のゼオライトが詰められている。2011年3月の原発事故では、原子炉を水で冷やした際に大量の放射性物質を含む汚染水が発生。東電は、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機そばにある二つの建屋の地下に汚染水をため、放射性物質を減らそうとゼオライトの土のうを投入した。汚染水に漬かったままの土のうは劣化が激しくなっている。
土のうの表面の放射線量は最大で毎時4・4シーベルトに達し、1時間浴びれば半数の人が死亡するほどの危険性がある。作業員の被曝リスクが高く、1~3号機の原子炉内で溶け落ちた核燃料(デブリ)と並んで廃炉の妨げとなっている。東電は20年頃から、回収に用いる2種類のロボットの開発を進めてきた。福島県楢葉町で行われているロボットの動作確認が最終段階に入り、実用化のめどがついたと判断した。
回収作業ではロボットを遠隔操作し、汚染水の中で土のうを破り、ゼオライトを集積する。25年度からは別のロボットを使い、ゼオライトを汚染水とともに吸引して地上階に移す。事故時に発生した油を吸着した活性炭の土のうも合わせて回収する。放射線を遮る金属製の容器に入れ、原発構内の高台で一時保管する。
一連の作業は27年度までに完了する計画だが、最終的な処分方法は決まっていない。福島第一原発の廃炉作業を巡っては、最難関とされるデブリの試験的な取り出しが11月に2号機で行われ、初めてデブリ(約0・7グラム)の回収に成功した。