平野レミ「お弁当づくりは苦手だった」それでも毎日続けられた楽しみは“息子とのコミュニケーション”
今は息子が自分のためにお弁当をつくってくれることも
――いまはレミさんの息子さんも、お子さんのためにお弁当をつくっているそうですね。 平野レミ: うちの息子が今、3人の子どものためにお弁当をつくって持たせてるの。一番上の子が小学1年生に上がるときに「君はこれから新しい人生を迎えるから、パパも新しい人生を迎えるね。パパがお弁当つくるから」って6年間つくり続けて。この前、上の子は小学校を卒業したけど、下の子2人分のお弁当もつくり続けているのよ。 それで息子は私の近所に住んでるから、自分でつくったお弁当を「お母さん食べる?」って持ってくることもあるの。それはそれはおいしいお弁当でね。いろんなものが入ってるけど、よその人がつくったお弁当じゃなくて、うちの息子がつくったから味が安心なの。ベロがそっくりだからね。 ――息子さんもレミさんの味を受け継いでいるんですね。 平野レミ: 「牛トマ」っていう牛肉とトマトを炒める料理があるんだけど、フランス人だったうちのおじいさんがフランスでよく食べてたのを日本に来てからも食べていたの。それをうちの父親が子どものときに食べていて、大きくなって結婚したら母もつくるようになって、それで今度は私がつくるでしょ。そして、今度は私から息子に、息子から今度は嫁に、嫁からその子どもに、5代続けて牛トマをつくってるの。 それってすごく大事で、家族のつながり、絆だったりする。同じ料理でずっとベロがつながってるから「ベロシップ」って言ってるんだけどね。スキンシップも大事だけどさ、ベロシップもとても大事だと思うのよね。 息子たちは料理を手伝ってくれたことは1回もないのに、息子2人の嫁に聞いたら、2人とも料理がうまいんです。それはなぜ?って思ったら、息子たちを勉強部屋に入って宿題させないで、私がキッチンで料理してる横でやりなさいって言ってたことがよかったのかなって。「お母さん、お腹減っちゃった」「ちょっと待って、もうちょっとよ」なんて会話しながら、ゴボウを洗う音とか、包丁でトントンと切る音とか、ジイジイ炒めてる音とか、できあがってくる料理のおいしそうな匂いとか。子どもたちは私が料理する姿を目で見て、耳で聞いて、鼻でも嗅いでたわけ。それで何かを感じていたから、息子たちは今、上手に料理ができているんじゃないかしら。これからの男の人はさ、お料理も掃除も何でもできないとダメだもんね~。 ----- 平野レミ 東京生まれ。料理愛好家・シャンソン歌手。主婦として家庭料理をつくり続けた経験を生かし、「料理愛好家」として活躍。"シェフ料理"ではなく、"シュフ料理"をモットーに、テレビ、雑誌などを通じて数々のアイデア料理を発信。『新版 平野レミの作って幸せ・食べて幸せ』『野菜の恩返し』(ともに主婦の友社)、『家族の味』『おいしい子育て』(ともにポプラ社)、『旅の絵日記』(中公文庫)など著書は50冊以上。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)