32歳での海外移籍。長澤和輝の心を動かしたのは「シンプルにいえば…」背中を押してくれたベガルタ仙台への感謝【コラム】
⚫️全幅の信頼を置いていた「監督のような存在」
「話をいただいてからは、本当に悩みました。それでもシンプルにいえば、また挑戦がしたかった。22歳のときにドイツに挑戦して、本当に多くの経験ができて、選手だけでなく人間としても幅が広がったと自分のなかでは思っているし、キャリアの終盤でもう一度、そういった挑戦がしたいと考え続けていました。今年で33歳になりますけど、これは本当にラストチャンスだと思いましたし、何て言うのかな、快く送り出してほしい、とお願いしたわけではなく、そういった自分の思いをチームには伝えました」 56歳にして初めてプロチームの指揮を執っている森山監督は、2月のシーズン開幕からダブルボランチの一角で起用してきた長澤へ、仙台の選手たちのなかでも特に全幅の信頼を置いてきた。 千葉に今シーズン最多タイとなる4失点を喫し、2-4で逆転負けを喫した試合後の公式会見。森山監督は「和輝の最後のゲームだったので、勝って最高の形で送り出そうと思っていましたが、残念ながらかないませんでした」と試合結果を悔やみながら、チーム内における長澤の存在感をこう語っている。 「チームのなかでコンダクターというか、ピッチのなかでの監督のような存在として、試合の流れを含めて、いろいろな状況に応じてチームを動かしてくれたのが長澤でした」 指揮官はさらに「いなくなったその穴は大きすぎるし、ここからが大変だな、というところですね」ともつけ加えながら、それでも最後は長澤の思いを尊重した。仙台側から離脱が発表されるまでに森山監督との間でかわされたやり取りを、長澤は感謝の思いを込めながらこう明かしている。
⚫️「誰が、というわけではなくて…」
「これまでに長く試合に出させていただいたなかで、ゴリさんからは『和輝の夢だったら』と背中を押していただきました。そのうえで『決断を成功にかえられるように』という言葉もいただき、本当にありがたく思っています。僕自身も一度経験していますけど、異国の地で一からチームに入って、という挑戦は決して簡単なものではない。それでも、そういった苦しみのなかにこそ成長があると思っています」 千葉に敗れて今シーズン2度目の4連勝を逃した仙台は、レノファ山口に勝ち点47で並ばれ、得失点差で後塵を拝する5位に後退した。J1に自動昇格できる2位の横浜FCとの勝ち点差は13ポイント。残り10試合となった状況で、J1昇格プレーオフに進出できる6位以内を死守するのが現実的な目標となる。 そして31日の次節で、勝ち点43で7位につけるいわきFCを、ホームのユアテックスタジアム仙台に迎える。千葉戦後のロッカールーム。絶対に負けられない6ポイントマッチへ、長澤は「今日を分岐点に、ここから歯を食いしばって頑張ってほしい」とチームメイトたちへのエールを残している。 「誰が、というわけではなくて、チームの一人ひとりが『自分が変えてやる』といった強い意志をもてるかが大切だと思うし、そこには年齢が上の選手も若い選手も関係ない。みんなで取り組んでいくしか、いまの状況をよくしていく方法はない。あれだけ苦しんだ昨シーズンも自分たちを信じて、温かい声援を送りながら背中を押してくれたサポーターのみなさんをJ1の舞台へ連れていく、という思いを胸に秘めながらトライしていってほしい。遠くにいながらの応援になりますけど、僕も期待していきたい」