マネックス傘下に加わった暗号資産ETFのパイオニア「3iQ」、その意図や日本市場での今後の展開は【CEO、CFOインタビュー】
機関投資家向けの新サービスとインデックス商品
──「QMAP」について詳しく聞かせてほしい。 サン=ジャン氏:機関投資家が暗号資産への投資を正確に把握できるようにするには、どうすれば良いかを考え、過去20年、投資分野で大きな成長を遂げたヘッジファンドに着目した。機関投資家がヘッジファンドに投資する際には、投資ポートフォリオの管理や運用をサポートするマネージド・アカウント・プラットフォームが存在していた。 我々は幸運にも、そうしたプラットフォームの初期に携わった人物をチームに迎えることができ、複数のファミリーオフィスにインタビューを行って、検証を開始した。そしていくつかの課題を見つけた。 1つ目は、彼らが投資する際には、1案件に大きな投資を行うことは望まないこと。この分野には、多くの投資対象が存在する。多様性が必要になる。だが現状は、すべてをカバーすることは難しい。データベースがないからだ。 2つ目は、投資対象の精査。例えば、多くのファミリーオフィスがFTX破綻の影響を受けていた。リスクがある先は避けたい。さらに投資対象を分散させると、手数料が積み上がってしまうことにもなる。 マーケットの検証を通して、機関投資家がこうした機能を求めていることが明らかになった。これが我々にとって、イノベーションを続けるための道であることは明白だった。ETFのステーキングについても同じことが言える。 つまり、我々には成長に向けて、2つの大きな要素がある。機関投資家に対するマネージド・アカウントと、ETFステーキングの提供だ。この2つで機関投資家を市場に引き寄せ、この分野を成長させることができる。 暗号資産投資戦略を実行したいものの、グローバルな構造、規制環境を把握できていない資産運用会社は多い。我々は、彼らが抱えている多くの問題を解決していく。 ──米CoinDeskと提携し、CoinDesk 20 Index(CD20)に連動するファンドの立ち上げも発表している。 サン=ジャン氏:QMAPは、機関投資家向けの商品。一方、個人投資家向けプロダクトとしては今、インデックス投資の動きが活発化している。暗号資産についても、ビットコインETF、イーサリアムETFに続くプロダクトとしては、暗号資産インデックス商品が考えられるが、規制当局にとっては、どの銘柄まで許可するか、その選択方法が問題になる。 一方、個人投資家を顧客とする投資アドバイザーは、投資の分散性を求めている。この2つの点で、インデックスは非常に重要となる。 自社で開発することもできたが、グローバル規模でインデックスの導入を検討したときに、CoinDeskが提供するインデックスは、ガバナンスプロセス、チームの経験、考え方、そして暗号資産の普及をどれほど真剣に考えているかという点で最も優れていると判断した。CoinDesk 20 Indexに連動するファンドは、暗号資産におけるS&P500になると確信している。 我々は世界各国の規制当局と連携しながら、できるだけ多くの市場にインデックス商品を導入できるよう取り組んでいく。2つの強力なブランド、チームが協力する。このプロジェクトを世界規模に展開することに期待している。 ──3iQの創業は2012年。ビットコインは生まれていたが、イーサリアムはまだ誕生していない時期だった。 ロープリッチ氏:創業から12年になる。創業者は、投資の世界に新しいサービスを提供したいと考えた。暗号資産にフォーカスしたのは2016年頃からだ。当時、世界中の新しい資産クラスを調査するなかで、暗号資産に焦点を当てた。 2017年にカナダ初のデジタル資産運用会社として認可を受けた。規制を回避して市場参入を図る企業もあったが、我々は規制当局と連携する道を選び、勝利した。そして、これが世界初の暗号資産ETFへとつながった。 また私はヘッジファンドやオルタナティブ投資にも長く携わっており、アクティブ運用プラットフォームの重要性を認識していた。QMAPは、最高クラスの運用プラットフォームだ。開発に2年以上を費やしたが、簡単ではなかった。すべてが規制され、明確な伝統的金融市場とは違う。 暗号資産はグローバルでの普及段階がさまざまなで、規制も異なる。非常に精緻なメカニズムが必要だった。だが、ETFにはない、競争優位を我々にもたらしてくれると考えている。ETFは、我々が作ったものを競合他社がコピーすることは簡単。だが、QMAPはそうはいかない。そして、マネックスグループの一員となったことは、さらに競争優位を拡大できると考えている。 |インタビュー:渡辺一樹|文:増田隆幸|写真:多田圭佑
CoinDesk Japan 編集部