マネックス傘下に加わった暗号資産ETFのパイオニア「3iQ」、その意図や日本市場での今後の展開は【CEO、CFOインタビュー】
なぜマネックスグループに加わったのか
──暗号資産運用のパイオニアである3iQがマネックスグループの一員となった背景は。 サン=ジャン氏:私はこれまでのキャリアをスタートアップ企業の立ち上げに費やしてきた。フォーチュン500の大手企業と仕事をするには、ある程度の規模と評判が必要だ。 一方で、投資の世界では、革新的なプロダクトは大手企業からは生まれない。彼らはすでに実績のあるETFのようなものを手がける。イノベーションは、暗号資産ネイティブの資産運用会社、つまりは、我々のようなところから生まれる。 この分野が成長するためには、個人投資家市場だけでなく、機関投資家市場の成長が不可欠。だが前述したように、かつて暗号資産分野に投資しようとした機関投資家は、暗号資産ベンチャーに投資することを選んだ。「3iQには感謝している。いろいろ教えてくれた。だがスタートアップとは取引できない」ということだった。 我々にとって重要なことは、機関投資家が求めるプロダクトを作るだけでなく、グローバルな存在感を持つパートナーと手を組むことだった。今、機関投資家と話をする際には、3iQはパイオニアであり、同時にグローバルな上場企業グループの一員だとアピールできる。この分野を前進させ、暗号資産を安全・安心に、規制された方法で世界中に提供するというミッションを追求するために合理的な選択だった。 ──マネックス側にはどのような背景があったのか。 大八木氏:当社はグループ内に暗号資産取引業のコインチェックを擁しているが、ボラティリティの大きなビジネスになっており、この分野の収益を安定させたいという思いがあった。過去、マネックス証券では資産運用型ビジネスを強化してきた。暗号資産でも同じことが考えられるのではないかといろいろ模索するなかで3iQと出会った。 しかし、ビットコインETFやイーサリアムETFを世界で初めて手がけたイノベーターという点だけであれば、投資していなかったと思う。面白いと感じたのは、彼らが、業界がこの先どう進むかを考え、そこから逆算してプロダクトを考えていること。彼らのプレゼンテーションには、今の収益は100%ETFだが、来年の収益の約3割は今後開発するプロダクトから得る予定とあった。それが、投資家自身が暗号資産ポートフォリオをカスタマイズできる「QMAP」だった。 2000年頃には機関投資家がヘッジファンドへの投資を増やしていった。世界に数百あるヘッジファンドをスクリーニングして、投資先を選んでいったが、それと同じことが暗号資産でも起こると考え、数百ある暗号資産ヘッジファンドをスクリーニングし、ストラテジーに応じて分散投資できるような投資プラットフォームを開発した。 伝統的な資産運用会社の出身者が多いので、スクリーニングのプロセスはしっかりしていて、プラットフォームに乗せる選定プロセスもよく作り込まれている。ベンチャースピリットやアイデアだけではなく、プロセスがしっかりしていると感じた。 また我々マネックスはサイズが大きくなってきており、小回りが効く、ベンチャー的な動きができる企業が加わると、グループ全体にとっても刺激になると考えた。もちろん、収益があがると考えているし、まだ全体から見れば小さくても、この分野で利益を上げている会社は珍しく、高成長を期待している。