マネックス傘下に加わった暗号資産ETFのパイオニア「3iQ」、その意図や日本市場での今後の展開は【CEO、CFOインタビュー】
よく知られたブランドを持つ大手金融機関と提携
──日本市場についてはどう考えているか。 サン=ジャン氏:日本には大きな可能性があると考えている。今は個人投資家が中心だが、機関投資家にも多くのチャンスがあることはわかっている。 日本の機関投資家は、洗練された非常に大きなプレーヤーだ。我々はマネックスと連携して、他の国々で行ってきたことと同じことを展開しようとしている。つまり、規制当局に働きかけ、機関投資家に情報を提供し、大手資産運用会社と協力して個人投資家と機関投資家に、安全・安心で、シンプルなプロダクトを市場に投入する。それが、当社の日本における長期的なビジョンだ。特に機関投資家向けには、洗練されたプロダクトを市場に投入できるチャンスがあると考えている。 ──日本政府は、Web3を国家戦略のひとつとして推進している。市場にとってポジティブなことか。 中川氏:日本は機関投資家が業法や監督指針などで、暗号資産への投資が難しい状況があり、暗号資産ETFも投信法の制限がある。また税制の問題もある。マネックスとしては、3iQが持つ海外でのノウハウ、商品組成力を活かして、資産運用会社と連携しながら、どういったプロダクトを提供できるか議論していきたい。 サン=ジャン氏:付け加えると、3iQは、暗号資産関連プロダクトの提供を行っているが、ノウハウや専門知識を持たない資産運用会社向けに商品開発をサポートしている。そこが3iQのユニークなところであり、他の暗号資産運用会社にはない事業だ。 スイスやUAEでは、3iQのチームとインフラを活用して、金融機関が自社ブランド名でプロダクトを提供している。日本でも大手金融機関と提携して、同様のことを行いたいと考えている。 3iQは暗号資産業界では専門家として良く知られている。だが、我々は投資家によく知られたブランドを持つ大手金融機関と提携したいと考えている。 ──日本市場ではどのような戦略を想定しているのか。 中川氏:日本はマーケットとしては、完全に個人投資家主導のマーケットになっている。また暗号資産は、マネックス証券のユーザー層と比べると比較的若い人が多い。つまり、証券口座を持っている投資家はまだ暗号資産には手を出していない。 暗号資産ETFはそのギャップを埋めるのではないかと期待している。暗号資産には、まだ「危ない」という印象を持っている人が多いが、ETFなら、そうした不安を取り除くことができるのではないか。暗号資産ETFが登場し、証券会社が扱うようになれば、安心感が大きくなって、かなりのニーズが生まれると期待している。 機関投資家も全般的に暗号資産に興味を持っている。例えば、大手機関投資家にとっては、一部を暗号資産に割り当てても、PL的にはさほどインパクトはない。ただ業法や監督指針の関係で投資できない。日本には本格的な暗号資産のカストディ事業者がまだ存在しないという問題もある。今後、信託銀行などが、テクノロジーを持っている会社と連携して、暗号資産カストディ事業を展開していくようなことも整備していく必要があるだろう。 当面は、個人投資家がメインになると考えているが、日本の機関投資家は世界でも有数の存在。時間はかかるが、動き出すとしっかりと投資しているので、将来的にはそこに注力していきたい。 また、サン=ジャン氏が今説明したように、3iQは販売会社ではなく、商品を組成する会社なので、日本の証券会社や資産運用会社と連携して、その先にいる投資家のニーズに合わせて、テーラーメイドで商品を組成し、我々としては運用報酬をいただくようなビジネスを考えている。