安易に考えるべきでなく、誰にでも勧められるものでもないが──「やはり凍結してよかった」当事者となった国会議員の体験から #卵子凍結のゆくえ
この状況では、どの情報を信頼してよいのか判断ができない。卵子凍結をしようという人が事前に調べてもはっきりとしたことがわからないのは、ある意味当然とも言えるだろう。では、医療機関に行けば医師等から必要な情報が得られるかといえば、そうとも言えないようだ。塩村さんは、施術にあたっても十分な説明は受けなかったという。その点を振り返ってこう話す。 「私の場合は、卵管の問題があったから、いずれにしてもそのときは卵子を凍結する以外になかったし、だから医師の先生も、余計な不安を与えないために詳しくは説明しなかったのだろうとも思っています。だけど、卵子凍結が決して大きな望みをかけられるものではない、ということを知らずに行えば、凍結したことで安心して、出産は後回しでいいと考え、本来得られるはずのチャンスを逃すこともあるかもしれません。やはりメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで凍結するかしないかを決めるべきだと、いまは思います」 塩村さんは、卵子凍結をすることを決して安易に考えるべきではないし、誰にでも勧められるものではないとする。卵子を凍結することによって得られる安心感は確かにあるが、そのために経なければならない精神的、肉体的そして金銭的な負担は大きかったとも話した。そのうえで、こう続けた。 「卵子凍結によって問題がすべて解決するわけではありません。でも自分自身について言えば、やはり凍結してよかったと、いまも変わらずに思っています」
「一人では悩ませない」という医師の言葉に救われた
卵子を凍結すべきかどうかは、その人の状況や考え方によって違ってくる。それゆえに、塩村さんは、相談できる医療者と出会えることの重要性を強く感じているという。 「昨年末に超党派の国会議員で、《生殖補助医療の在り方を考える議員連盟》を立ち上げたのですが、その中で私は、ある産婦人科医の先生に話を聞いていただく機会がありました。不妊治療と仕事の両立、また治療自体についても、私も悩むことが多くありました。職場の理解が得られなくて治療を続けるのが難しくなったり、どの治療を選ぶべきかが本当にわからなかったり……。そうしたとき、その先生がこう言ってくれたのです。『一人で決める必要はないから、安心してください』と」 不妊治療に関する悩みは多岐にわたり、それぞれに深い。たとえ理解あるパートナーがいたとしても、やはり、わからない、決められないことはどうしてもある。だからしっかりと寄り添ってくれる専門家の存在は何よりも心強いに違いない。塩村さんは続ける。 「『一人では悩ませません。夫婦で悩むんだったら夫婦と一緒に悩むのが自分たちの役割です。一緒に決めて一緒に前に進んでいきましょう』。そう言ってくださいました。その言葉に、私自身どれだけ救われたかわかりません」