安易に考えるべきでなく、誰にでも勧められるものでもないが──「やはり凍結してよかった」当事者となった国会議員の体験から #卵子凍結のゆくえ
病気の治療などの影響で妊孕性(にんようせい)を失う可能性がある場合に行う卵子凍結のことを「医学的適応」というのに対して、病気などとは関係なく、卵子の老化を防ぐ目的で凍結することを「社会的適応」という。塩村さんの場合は後者の例だ。ただ、実際に検査を受けてみると、状況は変わった。 「卵管の一つに問題があって、妊娠しにくいことがわかったのです。検査を受けるまでは悩む気持ちがあったのですが、その事実を知って気持ちが固まりました。次の選挙を戦ってから子どもを産むとすれば、そのときには40代です。年齢的にも妊娠するのは簡単ではなくなっているだろううえに、卵管の問題もわかったので、いま採卵して凍結するのが最善の選択だと考えました」 それまで議員として、不妊治療の当事者からはたびたび話を聞いてきた。それぞれに大変な思いをされているのも知っていたし、当事者へのサポートが必要だということも痛感してきた。しかし、いま思えば、当時はそれほど深い知識があったわけではなかったという。 自身の卵管の問題を知り、卵子を凍結すると決めて初めて、自分自身が当事者となった。わからないことばかりで不安が募った。
後から知った思わぬ事実
「夜中にものすごい汗が出てくるんです。1月、2月という寒い時期だったのに滝のように汗が流れてきて、びっくりしました」 卵子を凍結するにあたっては、できるだけ多くの卵子を採取するため、事前に卵巣に刺激を与えるホルモンの投与などを行うのが一般的だ。その注射を打ち始めたとき、塩村さんの体に異変が起きた。 「パートナーにタオルで背中を拭いてもらい、一晩でTシャツを4回も替えなければならないほどの汗でした。自分の体に何が起きているのかわからなくて、不安でとても怖かったです」 採卵の1カ月ほど前にホルモンの投与を始め、1週間くらいそんな状態が続いた。その後も採卵まで、体の状態を見ながら医師がその場その場で考えながらどうするかを決め、複数の薬剤を飲んだり打ったりした。どのような薬なのかは医師が丁寧に説明してくれたものの、自分に合うのかどうかという不安は常にあった。病院にも頻繁に通わなければならず、心身ともに消耗した。