トヨタとNTTが会見 スマートシティー構想で提携(全文1)広がるソフトウエアファースト
車づくりを次のフェーズに変革
分かりやすいのは、ソフトとデータが鍵を握る、高度運転支援機能などの先進技術です。ベースのソフトを先に実装しておき、リアルライフでデータを集めながら、AIをレベルアップさせ、ある段階でアップデートして機能を追加する、そんなことができるようになると思っております。車のマイナーチェンジがソフトウエアのアップデートという概念に変わってくれば、トヨタが持つハードの強みがさらに生きてくると思っております。 トヨタのハードには3つの強みがあると考えております。1つは、耐久性の良さであるDurability。次に、交換部品の手の入りやすさを意味するParts Availability。最後に修理のしやすさであるRepairabilityです。ソフトが都度最新のものとなり、ハードをより長期間使用することになれば、この3つの強みがより発揮されることになります。実際、協業相手のMaaS事業者は、トヨタのこの3つの強みを評価してトヨタの車を選んでくれております。ハードの強みを生かし、ソフトウエアファーストの考え方も取り組んでいくことでトヨタの車づくりを次のフェーズに変革することが可能になると考えております。 もう1つはトヨタだけでは対応することができないもの、車の役割の変化です。今から約10年前の2011年、東京モーターショーでトヨタはFun-Viiというコンセプトカーを出展いたしました。このときに私はスマホにタイヤを4つ付けたらこういう車になった、と申し上げました。走る、曲がる、止まるにつながる機能を加えると、車は新しい価値を生み出せると考えておりました。それから7年後、2018年1月のCESでe-Paletteを発表いたしました。e-PaletteはTRIやトヨタコネクティッドというソフトウエアのエンジニアたちが車をつくればどうなるかという新たな試みでした。
まちのプラットフォームづくり
その次にe-Paletteを走らせるための道が必要だと考えて生まれた発想がWoven Cityです。トヨタにとってWoven Cityとは、ものの見方、考え方を180度変えていくいことを意味しております。車や住宅が先にあって、それをつなげていくという従来の発想から、上位概念は人々が暮らすまちであり、そこに車や住宅をつなげていくという発想に転換する。そのために仕事のやり方を大きく変革することだと思っております。これがトヨタも、まちのプラットフォームづくりに取り組む理由でございます。 つながる化、IoT化により、車は個人の所有物、移動手段にとどまらず、社会システムの構成要素の1つとなり、果たすべき役割が変わってくると思います。例えば有事の際は非常電源になり、ハザードマップなどセンサーを通じて社会に役立つ情報を提供できる。さまざまな可能性が生まれてきております。 それ故に車の進化は社会の進化と密接な関係を持つことになります。私は社会システムに組み込まれた車を最も上手に活用いただけるパートナーがNTTだと思っております。なぜならばNTTの事業は社会づくりそのものに直結しているからであります。社会を構成するさまざまなインフラはNTTが提供する情報インフラに支えられております。人間の体に例えますと、車や家は筋肉、骨。通信は情報という血液を流す血管であり、その中でもNTTは大動脈として毛細血管に至るまでの血液循環を支え、体全体を動かしているのだと思います。言い換えますとNTTは社会システムの根幹を担っているわけであります。 このようにソフトウエアファーストの車づくりを実現し、まちという社会システムと結び付いた車の未来をつくっていくこと、これを会社規模で行うことが私の言う自動車をつくる会社から、モビリティカンパニー、すなわちモビリティに関わるあらゆるサービスを提供する会社にフルモデルチェンジするということになることであります。