それほど大きな問題ではない? 「iDeCo改悪」によって影響を受ける人、逆にメリットがある人とは
令和7年度税制改正大綱が発表になりました。巷では受取り時の退職所得控除のルールが変更される点が「改悪だ!」といわれているiDeCoですが、今回はどんな人にとって改悪なのか、メリットが拡大する人はどんな人なのかを解説していきます。 【画像】NISAとiDeCoの運用成績は?
iDeCoの3つの改正点とは
資産運用立国の実現に向け、政府が力を入れるiDeCo(個人型確定拠出年金)とNISA(少額投資非課税制度)ですが、今回の税制改正大綱の発表を受け、特にiDeCoの変更点に注目が集まっています。 改正点のポイントは3つ。ひとつが掛金上限額の引き上げ、ふたつめが加入可能年齢の引き上げ、みっつめが受取り時のルールの一部変更です。ひとつずつ見ていきましょう。
1. 掛け金上限額の引き上げ
iDeCoは老後の資産作りを目的とした私的年金の制度です。毎月の掛金は全額所得控除、投資信託等での運用で得た利益は非課税、60歳以降の受取り時にも退職所得控除や公的年金等控除の利用ができる非常に有利な資産形成の仕組みです。 ただいくつか複雑なルールがあることで敬遠されがちで、その普及はNISAよりもずいぶん遅れをとった感がありました。特に会社員の掛金については、企業年金の有無あるいは状況により異なります。 例えば、企業年金のない会社にお勤めの方は月23000円が上限、企業年金のある会社にお勤めの方は月55000円が上限、ただしこれは企業型確定拠出年金(DC)と確定給付企業年金(DB)などの他制度掛金相当額との合算額でさらにiDeCoの掛金は20000円を超えない額となっています。 それが今回の税制改正大綱では、第2号被保険者については公務員もふくめ全員の掛金上限額が月62000円に統一されます。これまで企業年金のない会社にお勤めの方は23000円から62000円へと一気に39000円も拠出限度額が拡大されます。 またこの金額は大枠の上限なので、企業型DCがある場合はDCの掛金を差し引いた金額が上限、またさらに確定給付企業年金(DB)などの他制度掛金相当額がある場合は、62000円からそれらを差し引いた残りの額がiDeCoでの拠出可能額となります。 他制度掛金相当額との併用拠出上限については2024年12月より「ただし20000円を超えないこと」との条件つきで開始になったところですが、この「20000円」の条件がなくなりよりシンプルに、企業年金等の掛金とiDeCoを合わせて62000円を上限とするというルールに変ります。 これは「穴埋型」と呼ばれ「勤務先の企業が企業年金を設けているかどうか、企業年金の形態がどうであるかといった違いにかかわらず、継続的に、かつ、平等に資産形成をできる環境の整備を進めるため」の改正であるとその変更の目的も税制改正大綱に記されています。 会社員についてはマッチング拠出にも改正が入ります。現行のマッチング拠出の個人の掛金は、会社が拠出する事業主掛金の額を超えないことという条件が設定されていますが、これが撤廃となります。するとマッチング拠出を選んでもiDeCoの併用加入を選んでも拠出できる金額は同額ですから、マッチング拠出を選ぶ方が増えてきそうです。税金のメリットはどちらも同じなので、よっぽど選べる運用商品のラインナップが悪いなどの理由がなければ、企業型の方が手数料を会社が持ってくれる分お得です。 また厚生年金への加入がない自営業者などの1号被保険者については現行の掛金上限月68000円が75000円に拡大されます。同時に国民年金基金の掛金も75000円まで引き上げられ、ふたつを併用する場合は合算75000円が上限です。