株式市場における「炭鉱のカナリア」とは?投資家が見逃せない暴落危機のサイン
株式市場は、常に上昇と下落を繰り返しながら成長してきました。多くの投資家が利益を求めて参入する一方で、市場には一定の周期やサイクルが存在し、時として大きな下落、いわゆる「暴落」が訪れることも珍しくありません。 株価が天井を打ち、底に向かって一気に崩れ落ちるタイミングは、決して誰にでも容易に予測できるものではありません。 しかし、実は市場には「炭鉱のカナリア」のように、潜在的な危険が迫ったときに警告を発するサイン、すなわち「早期警告システム」となり得る指標や特徴的な動きがあります。 この「炭鉱のカナリア」とは、かつて炭鉱労働者が有毒ガスの漏出をいち早く察知するためにカナリアを鳥籠に入れて地下に連れていった歴史的背景から生まれた表現です。カナリアはガスに敏感で、危険が迫ると人間より先に異変を示すことから、その挙動が「早期警告」となったのです。 株式市場においても、ある種の指標やセクター、資産クラスが他より先に不安定化し、その動きを読むことで大きな下落リスクを見抜くことが可能と考えられています。 そこで今回は「炭鉱のカナリア」となり得るいくつかのシグナルと、その背景や過去の事例について詳しく解説します。
1. ハイイールド債券(ジャンク債)の動向
・なぜ注目されるのか? ハイイールド債(ジャンク債)とは、信用格付けが低めの企業が発行する社債のことです。このような債券は、企業倒産リスクが高いため、投資家が要求する金利(クーポン利回り)が高くなりがちです。 景気が良好で投資家のリスク選好が強まる局面では、こうしたリスクの高い債券でも買い手がつきやすく、価格は上昇(利回りは低下)します。 逆に、投資家が経済の先行きを不安視しはじめると、まずは信用リスクの高い資産から売却を進める傾向があり、ハイイールド債の価格が下がって利回りが急騰します。 ・市場暴落前のサインに? 株式市場のピークアウト前には、ハイイールド債が株式よりも先に売られる傾向があります。投資家が「そろそろ危ないかも」と感じ始めたとき、まずは安全資産へ資金を移し、リスク資産から手を引きます。 その最前線がジャンク債の売り圧力であり、その価格下落が「カナリアの鳴き声」として映るのです。過去の大きな暴落局面でも、株価が急落する前にハイイールド債利回りが上昇し始めたことが観察されています。