パリス・ヒルトンが語る「表現者」としての信念、女性のエンパワーメント、日本を愛する理由
女性たちと作り上げた『Infinite Icon』
―他方であなたは、2012年以降DJとしても活動し、大きな成功を収めています。あなたにとってDJ活動の面白さとは? パリス:DJ業は大好き。ステージに立って、何千人もの人たちと音楽を介してコネクトできるのは楽しくてたまらないですし、彼らのエネルギーをひしひしと感じながら、全員をひとつにつなぐヴァイブを作り上げることができます。一緒に歌ったり踊ったりして、至福の時を過ごしている人のハッピーな様子を眺めているのも最高ですよね。そういう機会を得られたことがうれしくて、DJのシーンで自分の実力を証明できたと実感しています。 ―ほかにも結婚して家族を持つなど、プライベートな面でも様々な体験を重ねてきましたよね。『Infinite Icon』を作るにあたり、そういった公私にわたる積み重ねも影響を与えたんでしょうね。 パリス:それは間違いないですね。パーソナルな面でも仕事の面においても、私はこれまでに人生観が一変するような旅をしてきました。ビジネスウーマンとしてキャリアを築き、最愛の人との出会いがあり、娘のロンドンと息子のフェニックスというふたりの美しい子どもたち母親になった……。こうした体験のひとつひとつが、今の私を形作る上で計り知れないほど大きな役割を果たしましたし、アルバムを制作するにあたってどれも多大な影響を及ぼしました。とにかく私は、自分にとって本当に大切なものは何かを悟り、結果的により意味深いストーリーを伝えられるようになった気がするんですよね。ポップスターになることは私の昔からの夢だっただけに、『Infinite Icon』への反響をすごく誇りに感じています。 ―リリースされてから3カ月近くが経過しましたが、メディアの反応は上々ですよね。 パリス:ええ。信じられないくらい素晴らしいことです。今作に寄せられたラヴとサポートの声には感謝の気持ちで一杯ですし、ファンの心に深く響いていることに感激しています。オーセンティシティ、ありのままの自分を受け入れること、試練を克服する力といったアルバムのテーマに誰もが共感してくれたようで、私が作った音楽にインスパイアされる、高揚感を与えられる、あるいは「自分たちの存在に光を当ててくれた」といった声を耳にしました。私自身、そういったゴールを掲げてアルバムを作ったわけですから、こんなに多くの人がアルバムを愛してくれていることに興奮していますし、3rdアルバムを作るのが待ち切れません(笑)。 ―まさに「3rdアルバムはありそうですか?」という質問をしようと思っていたところなので、意欲的な言葉を聞けてうれしいですね。そもそも、このタイミングで新作を作ろうと思い立った、直接的なきっかけは何だったんでしょう? パリス:2年前の大晦日にマイリー・サイラスとシーアのふたりとパフォーマンスを行なって、「Stars Are Blind」をみんなで披露したのが、全ての始まりでした。彼女たちとステージに立つというのは本当に素晴らしい体験で、翌日飛行機でシーアと一緒に帰途についたんですが、その道中、「昨夜のあなたは最高だった! ポップスターになるために生まれてきたようなものなのに、なぜ2ndアルバムを作らないの?」と彼女に訊かれたんです。「自分の帝国を築くのに忙しくて!」と私が答えると、「じゃあ、私がエグゼキュティブ・プロデューサーになって、一緒に曲を書くっていうのはどう?」と提案してくれました。シーアからそんな素敵なオファーをもらったら、さすがに断るわけにはいかないですよね。だから私は「イエス」と答えて、すぐにスタジオに入りました。彼女はたくさんの曲を用意してくれて、それらを元に私たちは毎日作業に勤しみ、アルバムを完成させたんです。 ―シーアはあなたから何を引き出してくれたと思いますか? パリス:彼女は言うまでもなく、世界で最も偉大なソングライターかつシンガーのひとりなんですが、それだけに留まらず、音楽を介して、他者と途方もなく深いでレベルでコネクションを築く能力を備えています。私もシーアのそんな資質を愛していて、自分のアルバムにもスペシャルな何かを与えてくれるのではないかと予感していました。実際彼女のおかげで、自分の内面を深く掘り下げて無防備になることができましたし、それが私の中にあると自分でも気付いていなかったものを引き出してくれて、タイムレスで私らしさに忠実なアルバムを形作る手助けをしてくれたんです。とにかくあらゆる面で私を支えてくれたシーアを、“私のフェアリー・ゴッドマザー(※お伽話に登場する、主人公をピンチから救う妖精)”と呼んでいます(笑)。 ―そのシーアとのデュエット曲「Fame Won’t Love You」は本作だけでなく、彼女の最新アルバム『Reasonable Woman』にも収録されていましたね。“私は100万マイルもタップ・ダンスをし続けながら/微笑んでくれる顔を探した/私の無益な人生に意義を与えてくれるのではないかと願って”などと歌う、名声の空虚さを題材にした痛烈な内容でしたが、あなたにとってどんな意味を持つ曲なんでしょう? パリス:「Fame Won’t Love You」は私にとって非常に重要な曲です。世界には、名声が人生に多大なハピネスをもたらしてくれるのだと信じている人がいますが、名声なんて、自分にとって本当に大切なものを手に入れない限り、空虚な気持ちにさせられるだけ。そして人生において最も大切なものとは家族であり、自分が愛する人たち。私は夫と出会い子どもを授かったことで、それを悟りました。そんなメッセージを「Fame Won’t Love You」は含んでいます。この曲を一緒に書いている時にシーアは、最近の子どもたちは「将来何になりたい?」と訊ねられると、ほぼ全員が「有名になりたい」と答えるのだという話をしてくれました。そういう状況も踏まえて、大勢の人に届けるべき大切な曲だと思うんですよね。「有名になればハッピーになれる」と信じている子どもたちに、「人生にはもっと重要なことがありますよ」と教えてあげたいですから。 ―シーア以外にも今作には、メーガン・トレイナー、リナ・サワヤマ、ミーガン・ジー・スタリオン、アルゼンチン人のマリア・ベセラ、多様な出自の女性たちがフィーチャーされていますね。意図的に女性を選んだんですか? パリス:ええ。意図的に女性にフォーカスし、アイコンたちを集めました。先ほども触れたように私はこのアルバムを、エンパワーメントとオーセンティシティと試練を克服する力のセレブレーションにしたかった。だから、自分をインスパイアしてくれる才能豊かな女性たちこそ、そんな旅に同行してもらう仲間として相応しいと感じたんです。実際彼女たちは、それぞれにユニークな要素をアルバムに提供してくれましたし、異なる出自の女性たちがこうして一堂に会し、作業を共にし、お互いに高め合うというのは素晴らしいこと。曲ごとにベストな人選ができたと思いますし、誰もが輝けて、インスパイアし合えて、サポートし合える場所を作り出すことができました。