「そんなにお金を使って、なぜ⋯?」100億以上かけてIT投資→システム障害の根深すぎる訳 専門家が解説
ローランド・ベルガー、KPMG FASなどでパートナーを務め、経営コンサルタントとして「40年の実績」を有し、「企業のDX支援」を多くてがけている大野隆司氏。 大野氏のところに届く「経営層からの相談内容」が、このところ大きく変化してきているという。「DXの効果が出ない」という悩みが目に見えて増えてきているというのだ。 なぜ、こうした悩みが生じているのか。大野氏が自身の経験や大手・中小企業の現状を交えながら「デジタル投資のリスク」について解説する。 【話題の書籍】チーム・組織を強くしたい「全ての現場リーダー」に20年読み継がれてきた“必読書”
■340億円かけた基幹系システムの投資 最近、大規模システム投資のトラブルを目にすることが増えています。 各種調査を見ても(民間だけに限っても)、IT市場はこの5年で3兆円ほど拡大し、15兆円の規模になっていますので、「目につきやすい巨額」のトラブルが増えているのも当然かもしれません。 2024年4月から4カ月ほど、江崎グリコの主要製品群が出荷できなくなりました。これは、340億円かけて新しい基幹系システムへの切り替えたところ、実在庫とシステム上の在庫の数字が合わず、出荷が止まったことが直接の原因と言われています。
このシステム障害は、同社の1~6月期の売上を150億円、営業利益を36億円押し下げました。この損害額もかなり巨額ですが、江崎グリコが基幹系システム(財務・会計、販売、購買などの業務に利用されるシステム)の再構築に投じた「340億円」という額の大きさに驚いた読者も多いと思います。 システム構築における性能不良、進捗の遅れ、予算超過などのトラブルは、珍しいものではありませんが、訴訟に至ってしまうこともあります。
この7月、日本通運がシステムの開発失敗を巡り、開発元のアクセンチュアを訴えましたが、賠償請求額は約124億9100万円という巨額なものでした。ちなみに2018年11月に三菱食品がインテックを訴えた際は127億円でした。 賠償請求額が100億円を超えるものは5~6年に一度という感じですが、賠償請求額が数十億円という規模の訴訟は実は時々起きています。 これらを見て「システムの投資額の大きさ」に改めて驚いた方も多いかもしれません。