「そんなにお金を使って、なぜ⋯?」100億以上かけてIT投資→システム障害の根深すぎる訳 専門家が解説
「(そんな巨額投資をしたのに)いったいなにをやっていたのだか……」と思われる方もいるかもしれませんし、「システム投資はリスクが高いんだな」と思われる方もいるでしょう。 これらの件について大手紙の記事でしばしば目にするのが「2025年の崖」という言葉です。 ■最近よく見かける「2025年の崖」ってなにか? 「2025年の崖」は、2018年の9月に経済産業省が出した「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」で用いられたキーワードで、レポートの指摘を象徴するものとしても流通しています。
DXレポートの主張をまとめると、次のものになります。 ✔ DXとは、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを通して、競争上の優位性を確立すること ✔老朽化・複雑化・属人化している、いわゆるレガシーシステムがDXの足かせとなっている ✔レガシーシステムを放置したままだと、2025年以降毎年12兆円の経済的損失が発生する DXレポートは、「レガシーシステム化している基幹系システムに原因があり、基幹系システムの再構築こそが、DXの最重要テーマ」といった流行を引き起こしました。
手元に2019年秋に大手メディア主催(後援は経済産業省)のDXイベントの配布資料があるのですが、タイトルは「2025年の崖にどう対応するか」というもの。 大手金融機関による基調講演、十数社のコンサルティング会社やシステム会社による講演は、すべて基幹系システムの再構築に関するものでした。この傾向は現在も大きくは変わっていません。 このレポートは、システム会社やITコンサルティング会社を中心に非常に好意的に受け入れられました。
しかし、「企業の情報システムの構築などに縁がない一般のビジネスパーソン」の方々(言い回しが長いので失礼ながら「デジタル一般人」と称させていただきます)にとっては違和感があるのではないでしょうか。 ■普通の人がDXレポートに抱く“違和感” まず、「本当に毎年12兆円も被害が出るものか?」と思うのではないでしょうか。 12兆円を企業の売上額で見ると、日本郵政や、セブン&アイホールディングスなどが該当します。身近なものでたとえますと、コンビニ全社の国内売上総額で12兆円ほどです。