「そんなにお金を使って、なぜ⋯?」100億以上かけてIT投資→システム障害の根深すぎる訳 専門家が解説
また、「システムが古いままであることが、なぜ(DXによる)新規事業などの足かせになるのか?」という違和感もあるでしょう。 これらについての考察は別の機会に述べたいと思いますが、結論から言いますと、「デジタル一般人」の方々が抱くこれらの違和感は極めてまっとう、かつ本質を突いたものです。 たとえば前述した江崎グリコの失敗についても、新聞をはじめとしたメディアでも多くの批評が出ています。 全体を統括するCIO(最高情報責任者)をなぜ置いていなかったのかというもの(CIOを置けばいいというものではないのですが)、もっと適正な価格で(システム)調達ができなかったのか、といったものが目に付きます。
プロジェクト・マネジメントをうまくやることで、遅延やコスト超過を防げたはずだという批評もあります(江崎グリコがプロジェクトに着手した2019年12月時点では、終了は2022年12月、投資総額は215億円が予定されていましたが、実際の終了は2024年3月、投資額は342億円となりました)。 ■「なぜ数百億円規模の投資に踏み切ったのか?」 たしかにこれらには、傾聴すべきところもありますし、これらの点のいくつか(あるいはすべてで)江崎グリコの仕事が及第点になかったことは、間違いないでしょう。
しかし、「なぜ数百億円規模の投資に踏み切ったのか?」について批評した記事はほとんど見当たりません。 「売り上げ3000億円規模の企業が、340億円を基幹系システムの再構築に投資することが妥当だったのか」という疑問を持たれる「デジタル一般人」の方も多いでしょう。 「一般人」といっても、ビジネスでの経験から生じる違和感や疑問は、しばしば本質を突くものです。 「340億円あれば、他にもっと(企業の成長に資する)効果的な投資ができたのでは?」という問いはすぐに浮かぶと思います。
たとえば、事業ポートフォリオの改造のためのM&A、新規事業の大規模キャンペーンの実施、ROEやPBR改善のための自己株買いや配当増、早期退職者用の退職積立金の加算、といった具合です。 ■「違和感」を「建設的な批判」に仕立てるスキル そうはいっても、社内の情報システム部門やCIOから「DXとしての基幹系システムの再構築は必要です、他に手はありません」と言われると、「デジタルはよくわからないから」と違和感を放置してしまう方は(経営層も含め)少なくないでしょう。