当たって当たり前?「MEGA地震予測」を科学的にどう見るか
これまで数々の大地震に見舞われてきた地震大国・日本で、地震予知は悲願ともいえます。先月、東大名誉教授の村井俊治氏らが発表した「MEGA地震予測」が注目を集めました。南関東の警戒レベルを「最大」に引き上げたのです。村井氏らは今年4月のネパール地震も予知していたといい、その精度についても話題になりました。ただ地震の予知は非常に難しいものです。このMEGA地震予測をどう見ればいいのか。地震学者の島村英紀・武蔵野学院大学特任教授に寄稿してもらいました。 火山活動続く「箱根山」 富士山噴火との関連はあるの?
国土地理院のGPSデータを活用
日本の国家計画としての地震予知事業は1965年に始まりました。しかし、以後半世紀の間、一度も地震予知に成功したことはありません。東日本大震災(2011年)も、阪神淡路大震災(1995年)も、なんの予知情報もない不意打ちでした。 この「成功したことがない」国としての地震予知研究の隙間を縫うように、アマチュアの地震予知研究家がそれぞれの地震予知の成功をうたって有料の地震予知情報を出しています。
いくつかの「流派」がありますが、その一つが「MEGA地震予測」です。先ごろ、南関東の警戒レベルを引き上げたことが話題になりました。このところ週刊誌やテレビなどのメディアでも取り上げられることが多いようです。 MEGA地震予測は、JESEA(地震科学探査機構)が毎週発行する有料のメルマガで、村井俊治氏と荒木春視氏が開発した空間情報工学による方法で地震を予測するとしています。 このMEGA 地震予測に使っているデータは、すべて他人のデータ、つまり20世紀の終わりに当時の建設省国土地理院が全国約1000か所に展開した GPS測地点のデータです。平均25キロメートルの間隔で、日本全土をカバーしています。データそのものはインターネットで時々刻々公開されているものです。米国の軍事衛星であるGPS衛星が発信している電波を受信することによって受信点の位置が分かるという仕組みで、カーナビやスマホにも広く使われているものです。