美女ゴルファーだけど苦労人…なぜ原英莉花は”日本一”タイトルを手にすることができたのか?
2017年7月の最初のプロテストはOB6発がアダとなり、合格ラインに2打足りずに不合格となった。アマチュア資格を放棄していたため、その年の「日本女子オープン」は臨時登録プロの資格で出場。プロデビュー戦で23位となったが、JLPGA(日本女子プロゴルフ協会)のメンバーではなかったため、JLPGAの記録には残らず、賞金ランキングへの加算もない。翌年のツアーの出場優先順位を決める、その年のQT(予選会)は最終に進めずQTランクは117位。それでもTP単年登録して何とかツアーに出場できる資格だけは得た。 2018年は下部のステップアップツアーで早々に2勝。レギュラーツアーでは25試合に出場し、賞金ランキング38位で賞金シードを獲得した。そして、昨年6月の「リゾートトラストレディス」で黄金世代では7人目の初優勝。 「私って優勝できるのかな…。どうしたら勝てるんだろう」との悩みも消し飛んだ。勝みなみ、畑岡らエリートアマだったライバルたちとは違い、ジュニア時代の実績はほとんどない。 落ち込んだときは「まだ20歳にもなってないだろう」「お前は自分をわかっていない」という師匠であるジャンボ尾崎の辛口のエールが前に進む力となってきた。 そして初優勝後は、こうも言われてきた。 「ひとつはまぐれで勝てる。大事なのは2勝目なんだ」 だが、その2勝目までは約1年4カ月かかった。その間、同じ”雑草アマ”だった渋野は海外メジャーの「AIG全英女子オープン」を制した。 「長かったといえば長かったかな」 足踏みしていた原因は、飛ばし屋ゆえに諸刃の剣となったドライバーショットである。昨季は36試合計109ラウンドでダブルボギーは、ツアー全体で2番目に悪い40個もあった。トリプルボギー以上は4個。計44個はこれも2番目に多かった。何度か巡ってきたチャンスもミスから自滅がパターンだった。
「去年まではドライバーで攻めるのが自分のゴルフと思っていた。でも、ダボ(ダブルボギー)が嫌で守りに入った。自信のないゴルフをしていたと思います」 安定感が増した今季は7試合でダブルボギーは2個だけ。トリプルボギーはまだ打っていない。成長の証しが、あこがれだった日本一のタイトル。ただ一人だけの4日間ともアンダーパーで優勝のゴールに飛び込んだ。目標とする恩師のジャンボ尾崎からは、こんなメッセージが届いた。 「英莉花はパッティングさえ良くなれば、トッププレーヤーになれる。今回のこの緊張感の中で、いいプレーができたのも、その証拠である。女子のゴルフもずいぶんとレベルアップしたものだ。おめでとう」 原も、その言葉をしっかりと受け止めた。 「練習と強い気持ちがあれば上に来れると今は思う。今でも奈紗ちゃんとは差があると思うけど、一歩一歩詰めていければと思います」 この日、米ツアーの「ショップライト・クラシック」で優勝争いをした畑岡の名前を、繰り返し出したのには理由がある。 原も将来は米ツアー挑戦を視野に入れているのだ。メジャー制覇で得た3年の複数年シードで、安心して日本を離れることもできる。「いつか米ツアーのQTを受けて、向こうで戦ってみたい。悩める材料ができて幸せです」。さらなる高みを目指す美人ゴルファーの新たな挑戦が始まる。