樋口恵子「朝ドラ『虎に翼』が支持されるのは、今の世の中が100年前と地続きだと感じるから。〈性別により差別されない〉新憲法は大きな希望だった」
◆家には2人の主人はいらない それにしても、戦前の民法はひどいものでした。ドラマの2回目で、結婚すると女性は「無能力者」となると民法に規定されていることを知り、主人公は衝撃を受けます。きっとドラマを見ていた方も、ビックリされたのではないでしょうか。 明治民法における無能力者とは、「行為能力が制限された者」の意味だそうです。妻は不動産売買や訴訟などの法的行為を夫の許可なく起こせず、離婚したくても離婚できなかったのです。財産も夫に管理されていたし、夫の許可なく働くこともできませんでした。 明治民法制定に関わり、民法の父とも呼ばれた法学者・梅謙次郎は、「天に2つの太陽がなく、国に2人の王がいないように、家には2人の主人、つまり戸主はいらない」と言ったとか。100年前の日本は、そんな社会でした。 新憲法や新しい民法が作られても、社会はそう簡単には変わりません。でも婦人運動家をはじめ多くの人たちの尽力のおかげで、少しずつではありますが、日本社会は変わっていきました。三淵嘉子さんも、道を切り開いたお一人でした。 朝ドラ『虎に翼』がこれだけ多くの視聴者に支持されているのは、今の私たちが生きている世の中が、100年前と地続きだと感じさせてくれるからではないでしょうか。だから観た人それぞれの心になにかが突きささり、改めて今の女性のありようを考えたくなります。 まだまだ日本は変わらなくてはいけないし、そのために老いも若きも手をたずさえて、がんばらねば――。 そんなわけで私はヨタヘロしながら、赤松良子さんがいつもおっしゃっていた「霞が関のビルの中に、いまだに家父長制が居座っている!」というセリフを思い出し、今も気炎を上げている次第です。 (構成=篠藤ゆり)
樋口恵子
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