危険!入浴中の死亡事故 ヒートショックや疲労蓄積による意識低下【医師が解説】
毎年、日本では約5000人が入浴中に亡くなっています。その多くが高齢者で、特に冬場に増加することが特徴です。この数は交通事故死者数を大きく上回ります。入浴は日常的な行為でありながら、注意を怠ると命に関わるリスクを伴います。 私自身、外科医として手術に明け暮れていた頃、疲労困憊のまま浴槽に浸かり、ついそのまま寝てしまうことが何度もありました。お湯が冷めて寒さで目覚めることを繰り返していたのを思い出します。幸い事故には至りませんでしたが、今思えば非常に危険な状況でした。特に疲労が蓄積していると、入浴中の意識低下は誰にでも起こり得るものです。 入浴中の溺死の主な原因として挙げられるのが「ヒートショック」です。寒い脱衣所から急に温かい浴槽に入ることで血圧が急激に上下し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすリスクが高まります。また、疲労やアルコール摂取、体力の低下なども重なると、溺死に至る可能性がさらに高まります。 特に高齢者や持病を持つ方はこうした事故を防ぐために、以下の対策が必要です。まず、脱衣所や浴室を暖房で暖め、室内外の温度差を小さくすることが重要です。また、浴槽に入る際は湯温を40℃以下に設定し、いきなり浸かるのではなく体を少しずつ慣らすようにしましょう。長時間の入浴を避け、家族と同居している場合は声を掛け合い、異変に気付ける環境を整えることも効果的です。 入浴は心身を癒す大切な時間ですが、油断は禁物です。安全対策を徹底し、寒い季節も快適な入浴を楽しむことが健康への第一歩となります。医療者として、そしてかつて自分が危険な状況にあった!?経験からも、この重要性を伝えたいと感じています。 ◆西岡清訓(にしおか・きよのり)兵庫県尼崎市の「にしおか内科クリニック」院長。呼吸器、消化器疾患を中心に一般内科診療などを行っている。