何がどう凄い?近年誰も成し得なかった外国人正捕手の座を中日A・マルティネスは射止めることができるのか?
中日に頼れる新戦力が現れた。1日に育成から支配下登録されたばかりのアリエル・マルティネス捕手(24)だ。4日の巨人戦で代打から捕手として途中出場し、2000年7月の中日のディンゴ以来、20年ぶりの外国人捕手となり、5日の巨人戦では「8番・捕手」でスタメン出場。1991年のロッテのマイク・ディアズ以来、29年ぶりの外国人捕手のスタメン記録となった。 盗塁もひとつ阻止するなど強肩で、5日の巨人戦では、先制点につながるチャンスメイクを含む3安打。守っては、先発の梅津をリードして巨人打線を6回5安打7奪三振3失点に抑え、相棒の今季2勝目をサポートした。 アルモンテの故障による登録抹消と正捕手が決まらないという中日のチーム事情が重なり生まれたチャンスを見事に結果につなげた。 試合後、与田監督は、「去年から非常にいい状態だった。オフにケガがあったのですが、そこから大活躍してくれた。今シーズン楽しみな戦力として期待している」と高く評価した。 今日7日のヤクルト戦からも与田監督のスタメン起用が続くとみられるが、マルティネスは、正捕手の座をつかむことができるのだろうか? 何の因果か、日本で最初に捕手として出場した外国人は、1936年に中日の前身である名古屋軍でプレーしたバッキー・ハリスだった。以降、数人の外国人捕手がいたが、近年、1軍でプレーしたのは中日のディンゴとロッテのディアズの2人。しかも、ディンゴの捕手起用は1試合だけで、ディアズも2年目に15試合捕手で起用されたが、正捕手というわけではなかった。 そこには言葉や捕手としてのスキル不足という壁があった。 では、マルティネスの捕手スキルはどうなのだろうか。 千葉ロッテで名捕手として活躍した評論家の里崎智也氏は、「キャッチャーとして悪くない。うまい捕手の構え方をしている」と評価した。
里崎氏は「キャッチャーのスキルの80%は、その基本姿勢で決まる」としている。具体的には、肩幅よりやや両足を広く構え、両太ももが地面と平行になるようにキープする中腰で、重心の位置をへその下の「丹田」と呼ばれる位置に置く。前かがみになるが、猫背ではなく、背筋を伸ばしたままという姿勢だ。 「マルティネスは、太ももが水平だし、重心の位置もいい。あの形ならうまいだろうと見ていたが、実際、うまかった。この姿勢ができると、ブロッキングも前に腰を落とすだけでOKになるが、マルティネスは、それができていてブロッキングは抜群だった。キャッチングは良くもなければ悪くもない。また右手を右膝の上に置いていたが、あの位置が正しい。ケガ防止のため右手は後ろで隠せと教える人もいるが、実は、右膝の上に置いておけば、ミットに隠れ死角になる。僕はプロ16年で一度も右手にボールを当てたことがない。二塁へスローイングする際にもボールの持ち替えがスムーズにいく」 マルティネスは、5日の巨人戦で梅津のウイニングショットであるフォークボールをブロッキング技術で1球も後ろにそらさなかった。梅津との間に信頼感が生まれ、腕の振りがますます鋭くなり、巨人から7つの三振を奪っている。捕手として重要な技術だ。 里崎氏は盗塁阻止力も評価した。 「スローイングはよかった。4日の盗塁を刺したときのスローイングは、僕の計測では1.86秒だった。捕手が一番スローイングをしやすいボールが来たのだが、左打者が打席に入っていて、この数字はかなりいい。肩自体は驚くほど強くもないのだが、捕ってからが早い。できることはやっている。盗塁阻止は、ピッチャーとの共同作業であとは、ピッチャーのクイック次第だが、走られない捕手だろう」 4日の巨人戦では、6回1死一塁から吉川尚の二盗をコントロールされたストライク送球で刺した。里崎氏が、このスローイングを計測したところ「1.86」秒だったという。 里崎理論では、1.90から1.95秒以内を合格ラインとしている。元ヤクルトの名捕手、古田敦也氏が中日の若手に講習をしたのを見たことがあるが、その際「1.90秒以内」と教えていた。“甲斐キャノン“と呼ばれるソフトバンクの甲斐は1.7秒台を記録することもあるが、1.8秒台のスローイングなら合格だろう。