駅ナカ?ホテル経営?そんなものは鉄道会社の柱になり得ない、乗客がいないとダメになるだけだ
千葉県のいすみ鉄道や新潟県のえちごトキめき鉄道の社長として、数々の人気企画を打ち出した鳥塚亮氏が、静岡県の大井川鐵道社長に就任した。鉄道業界で有数のアイデアマンとして知られる鳥塚氏が考える地方鉄道の未来とはどのようなものか。ロングインタビューの後編をお届けする。 【写真】紅葉が色づき始める中、鉄橋を渡る蒸気機関車と客車 (池口 英司:鉄道ライター・カメラマン) ■ 減っていく需要をただ見過ごした鉄道業界 ――前回、昭和40年代までの旺盛な鉄道需要にあぐらをかき、商品開発を怠ってしまったことが鉄道会社の衰退を招いた、という話をされていました。 鳥塚亮・大井川鐵道社長(以下、鳥塚氏):飛行機の世界に例えれば、いまボーイング747(ジャンボジェット)を飛ばしている会社がありますか? という話です。 現在の主流は運用しやすい中型機です。鉄道はそういう風に、輸送の形態を変えていくことができなかったのです。だから、減っていく需要からどんどん乖離していった。需要に合わせて、編成の増減をさせることさえ、もう面倒臭くなってしまったのです。 いま、JRの「みどりの窓口」に並んでいる人って、実は結構若い人が多いんですよ。新幹線にどうやって乗っていいか分からないし、スマホにアプリも入っていない。 JR東海の「スマートEX」だとか、JR東日本の「えきねっと」だとか、そんなものはめったに使わないので、入れてないのです。だから、窓口に並んでいるんですよ。 でもこれって、何かおかしいなって思いませんか? ――鉄道が高くて不便な乗り物になっているのかもしれない。 鳥塚氏:高速バスの切符であれば、スマホで買える。でも、新幹線の切符は駅の窓口に並ばなければ買えない人は、めったに新幹線に乗りません、ということなのではないでしょうか。 料金が高いもの。高速バスなら東京から静岡まで3000円くらいで行けるのに、新幹線だと6000円以上かかる。高速バスの切符は、前もって買っておけば割引があるのに新幹線はほとんどない。ちょっと安くなるだけではないですか。