ちょっとくたびれたら……心ほどける紅葉秘湯へ
のんびり過ごす山里の湯 野趣あふれる秘湯もいいが、比較的交通の便がいい身近な秘湯で時間を忘れ、心静かに過ごすのもいいものだ。おすすめは利根川上流に位置する水上温泉の「蛍雪(けいせつ)の宿 尚文(しょうぶん)」(群馬)。山里にある素朴な宿の趣で、母屋と離れの客室があり、ゆっくりと紅葉と温泉が楽しめる。 温泉はアルカリ性単純温泉の柔らかな湯。湯につかり色付く木々を眺め、心地よい風に身を任せる時間は至福のひとときである。また、秋の恵みである地元のキノコを堪能できるプランがあり、料理でも深まる秋を感じることができる。 ところで紅葉期の観光地はどこも混雑や渋滞が絶えない。そこでおすすめしたいのが、旅する時間や場所、行動をずらす「ずらし旅」だ。初日はゆっくり出発してチェックイン時間ぴったりに宿に入り、翌朝早く起きて近隣の紅葉を楽しむというもの。 また、京都や箱根など人気観光地も京都なら大原や亀岡、箱根なら湯河原や小田原と、中心地から少しずらしたエリアの宿に泊まるなどの工夫でストレスを減らせる。モミジだけでも20種以上あるという日本は紅葉あふれる地だから、名所以外にもお気に入りを見つけてみるのもいい。 温泉旅に出たいと思う時、それは日常に疲れ、仕事やしがらみから逃れたいと感じる時かもしれない。静かないで湯で心身を休め、リセットする。温泉の再生力と紅葉の彩りに、日本人でよかったとつくづく思う。 文/関屋淳子(せきや・じゅんこ) ウェブマガジン「旅恋.com」編集長。フリーランスを経て2010年に(株)旅恋を設立。生活情報誌、書籍、ウェブの編集や執筆、テレビ番組のナビゲーターなどを行う。温泉ソムリエ、温泉入浴指導員(厚生労働省認定) ※「旅行読売」2024年10月号の特集「心ほどける 紅葉の秘湯」より