元箱根駅伝スターの大迫傑と神野大地はなぜ福岡マラソンで明暗を分けたのか
昔のことはわからないが、2000年以降で福岡国際マラソンのスタート、ゴール地点となる平和台陸上競技場に最も多くの観衆が詰めかけたのは間違いない。特に今年は若いファンが多く、彼女たちの熱視線を集めていたのが、大迫傑(26、ナイキ・オレゴンプロジェクト)と神野大地(24、コニカミノルタ)だ。 箱根駅伝では早大の18年ぶり優勝に貢献した大迫は今回が二度目のマラソンで初の国内レース。一方の青学大時代に箱根駅伝5区で爆走して「山の神」と呼ばれた神野は初マラソンだった。 ふたりは“東京五輪の星”とも言える存在だが、福岡では明暗をわけた。 大迫は日本歴代5位となる2時間7分19秒の日本人トップの3位でフィニッシュ、2019年9月以降に行われる東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を獲得したが、「2時間8分59秒」を目標にしていた神野は2時間12分50秒の13位でレースを終えたからだ。 ふたりは今年2月5日の丸亀国際ハーフマラソンで激突している。神野が1時間1分04秒(日本歴代9位タイ)で日本人トップに輝き、大迫は9秒遅れた。この時点では「スピード」が武器の大迫よりも、「粘り強さ」が持ち味である神野の方がマラソンの適性があるかと思われた。 しかし、大迫はマラソンにしっかりとアジャストさせてきた。世界屈指のメジャーレースであるボストン(4月)で堂々の3位に食い込み、2時間10分28秒をマーク。日本選手権で連覇を果たした1万mは参加標準記録に届かず、ロンドン世界陸上の出場を逃すも、その後は順調にマラソントレーニングを積んできた。 昨季は順調だった神野は男子マラソンのニュージーランド合宿で右アキレス腱を痛めた影響で今季は出遅れた。復帰後はチームのマラソン練習を軸に、オリジナルのメニューも積極的に取り入れた。2時間8分台で走るには、従来の練習メニューでは足りないと感じていたからだ。夏合宿では自らの提案で70km走を実施。個人契約しているトレーナーと“マラソン仕様”のフィジカルトレーニングもこなしてきた。 そんなふたりが福岡国際マラソンで再戦した。 スタート時の気温は13.4度、湿度57%。ペースメーカーは設定通りに5km15分00秒ペースできっちりと引っ張った。中間点(1時間3分19秒)を過ぎたあたりから神野が遅れるも、大迫は悠々とレースを進めた。 大迫はペースメーカーがいなくなった30kmからの5kmを14分55秒とスピードアップ。35kmからの5kmも15分18秒でカバーして、日本人現役最速タイムをゲットした。一方の神野は20km以降、徐々にペースダウン。35kmからの5kmは17分07秒と落ち込んだ。 奇しくもレース後、ふたりは「やってきたことは間違いではなかった」と同じ言葉を発している。