東京五輪を狙う天才中学生ボクサーが5連覇
だが、肥満体質で、その影響から足も遅く、学校のリレーのメンバーに選ばれないことに悩んでいた息子に父が、「ダイエット代わりにボクシングをやってみたらどうか」の声をかけて、夏休みに集中して練習に通い始めてから、眠っていたDNAが目覚めた。「ボクシングがどんどん面白くなってきた。練習でやった成果が、そのまま出て試合で勝てると、それが嬉しかったので」母の久代さんも、「初めてスパーリングをした日は、泣いて帰ってきましたが、どんどん強くなって、周囲に褒められることが嬉しかったようです」という。 父の好二さんは、現役時代、サウスポースタイルのカウンターを得意とするテクニシャンとしてフェザー級の日本、東洋王者を奪い、世界挑戦も2度経験している。最初の世界挑戦は、敵地の韓国でWBA世界スーパーフェザー級王者、崔龍洙(韓国)に12回判定で敗れたが「完全な敵地判定。日本なら勝っていた」の評価が出る接戦だった。結局、2度目の世界挑戦も、“リトルハグラー”の異名を持つフレディー・ノーウッドの強打の前に砕かれ、世界王者の夢は果たせなかった(この試合は、ノーウッドが計量に失敗。オーバーウエイトの相手と戦う不利な展開だった)。結婚は、引退後で、息子は、父の現役時代の姿を知らないが、その試合のビデオは、日本タイトル戦も含めて、ほとんどすべてを見せたという。 「自分が負けた情けない姿もすべて見せた。いかにボクシングはメンタルが大事かをわかって欲しかったから。打たれずに打つボクサースタイルを貫き、八重樫のような強いメンタルを持ってもらいたい」と父は語る。ジムでは、父と子のマンツーマン指導。八重樫、井上らのトップクラスのボクサーが揃っていて環境は最高。今回の試合前には、八重樫、井上のスパーリングパートナーとしてフィリピンから呼ばれた元WBC世界フライ級王者のソニーボーイ・ハロや、世界ランカーのロッキー・フェンテスらともスパーをする機会に恵まれた。これ以上ない英才教育。中学生が相手にならないのも当然か。父が徹底して口うるさく言うのはディフェンスの大切さ。「タイミング、メンタル、技術……。そのすべてについて僕よりセンスはある」。 松本自身も「気持ちは八重樫さん、テクニックは井上さん。課題は、まだたくさんありますが、打たさずに打つボクシングを理想として追いたい」という。