東京五輪を狙う天才中学生ボクサーが5連覇
「2ラウンドに少しペースが崩れかけた。判定でもいいから5連覇をしたいと考えていたが、お父さんの『出て行け!』という声が聞こえた。(ダウンと判定された)左フックは練習で井上尚弥さん(WBC世界ライトフライ級王者)がやっていたパンチ。それを勉強させてもらったもの。(v5の)多少プレッシャーはあったが、気持ちよくできた」。 小5から数えて前人未到のV5を達成したが、ヘッドギアを取ると、まだ幼さの残る可愛い顔。興奮で頬が紅潮していた。リングサイドにはジムの先輩で、2日前にローマン・ゴンザレスと歴史に残る大激闘を演じた前WBC世界フライ級王者の八重樫東が応援にかけつけていた。何度かマスボクシング(軽い寸止めのスパーリング)で松本と拳を合わせた経験のある八重樫も「身体能力の高さがずば抜けている。ボクシングセンスは、間違いなく僕なんかより上(笑)。これから体ができてくれば、さらに成長していくでしょう」と後輩のV5を絶賛した。 松本は大橋ジムの興行の際は、必ずチームの手伝い役として控え室で働いているが、今回は、試合が2日後に控えているということもあって、大橋秀行会長と父である好二さんと相談して会場の代々木第二体育館には足を運ばずに調整に専念した。やむなく自宅でテレビ観戦となったが、八重樫の勇気に刺激を受けたという。「身近にいる八重樫さんの感動する試合を見て、負けられないと思ったし、やる気が何倍も上がってきました」。 松本が、父である好二さんの背中を追って本格的にボクシングを始めたのは、滝頭小学校3年の夏。それまでは、週に一度、父に無理やり連れられてジムに通っていたが、「ボクシングが嫌いでしょうがなかった」という。 「泣き虫でね。なんでこんな痛いことしなくちゃいけないのと嫌がっていました」とは、母の久代さん。好二さんが「ボクシングをやるなら、好きなゲームをなんでも買ってやるから!」と餌を撒いても、「ボクシングやるくらいならいらない」とそっぽを向いた。