丸紅・リスクマネジメント部 インタビュー ~ 歴史が紡ぐ組織力、必要なのはこれからのストーリーを読む力 ~
―部の特徴、近年特に注力している点は?
多くのリスクが取り巻くなかで、我々リスクマネジメント部の基本的な定義は、「利益の源泉になっているリスク」を管理し、リスクとリターンのバランスを取りに行くことと考えている。具体的には、商品市況変動リスクと、与信リスク、M&Aに関わるリスク、マクロの経済環境リスク、カントリーリスクなどであり、これらを評価して、そこに見合いのリターンが取れているのか。そうでなければそれをどう変えればいいのかとアドバイスすることはリスクマネジメント部の主要な仕事となっている。 持っているリスクの大きさという意味では、事業投資に関するものが大きくなっており、人員も増やしている。投資の入り口での判断だけでなく、買収後の戦略や人事・報酬制度の設計といった点も含めたPMI(統合効果を最大化するプロセス)をカバーしており、こうしたPMIを専門とするチームもある。 他に特徴的なのは、グループ会社のリスク管理の部隊、海外各支店にも駐在員として多く人を派遣している点だ。そこで経験した上でまた部に戻り、全体の制度設計に取り組むといったことをローテーションとしている。
―機能子会社の「マリックス」、グループ会社の審査部の組織「紅審会」とは?
両者の源流となっているのは1979年に部内で新設された審査4課という組織だ。連結経営が強く意識されていなかった当時、丸紅本体では取引を解消したにも関わらず、グループ会社では取引を継続したために貸し倒れが発生する事案が相次いだ。グループ会社の与信管理についても本体でもサポートすべきという考えから、この課が誕生した。 審査4課は丸紅の社員の他にグループ会社の社員も何人か受け入れた。このメンバーが中心になって通常業務の他に、与信管理に関する勉強会をスタート。これが発展的に1983年4月に「紅審会」として正式に発足した。一方、審査4課はその後、事業与信審査室と改名し、その後の変遷を経て2000年にマリックス株式会社として独立。信用情報に関する業務や信用調査会社との対応、国内グループ会社の窓口業務を一元化したという経緯がある。 マリックスは信用情報を収集して、丸紅グループ各社に情報を提供するのだが、受け入れる側のグループ会社でも、信用情報の取り扱いに関する基本的なベースを理解してもらわないと安易に情報提供はできない。このため、マリックスは業務、紅審会はグループ会社側の勉強会として、車の両輪のような形となった。