東京で開催中「ポケモン×工芸展」ミュウツーの“表皮”に多数のポケモンを発見!驚きの彫金作品の誕生秘話
2023年3~6月に石川・金沢の国立工芸館で開催された、「ポケモン×工芸展―美とわざの大発見―」。ポケモンと工芸がコラボレーションした新たな試みとして大きな話題となり、アメリカのJAPAN HOUSE LOS ANGELSでの展示を経て、2024年に国内での巡回展が始まりました。 20名の工芸作家がそれぞれの技術を駆使してポケモンやその世界観を表現する試みは、巡回を重ねる中で新作が加わるなど、進化し続けています。 2024年11月1日より始まった東京・港区の麻布台ヒルズ ギャラリーの巡回展でも新たな作品が登場しています。数ある新作の中でも会場の入口で強い眼光を放っているのが、彫金作家・吉田泰一郎さんが手掛けた作品《ミュウツー》。 「ポケモン×工芸展」東京会場の目玉でもあるこちらの作品。2024年9月某日、ミュウツーの制作進行中のアトリエで、工芸ライターの田中敦子さんが吉田さんに作品への思いを伺いました。
初めに作る予定だったのは別の幻のポケモン
これまでも、《イーブイ》《ブースター》《シャワーズ》《サンダース》と4つの作品を制作した吉田さん。その表現と技術を間近で観ることのできる作品は、驚くべき存在感とリアリティで観る人を魅了してきました。そして、5作目となるのが今回の新作《ミュウツー》です。 「当初はミュウツーではなく、ミュウというポケモンをつくろうと思っていたんです。このポケモンはあらゆるポケモンの遺伝子を持つと言われる幻のポケモンなんです」 <写真>展示の序盤から注目を集める吉田さんの《ミュウツー》。
任天堂ゲームボーイのソフトとして1996年に発売されたポケモンの第1世代(第1作目)『ポケットモンスター 赤・緑』において、特別な方法で入手できたミュウ。その存在自体が“幻”とされている。 「まず問題になったのは、僕にとって“存在”が制作のテーマだということです」 この5、6年、“存在”をテーマに“表皮”の表現を追っているという吉田さん。「存在とは、中があるから外、外があるから中があるんじゃないか、と。表皮はその境界線で、そこを徹底的に表現することで、見る人が対峙した時、“存在”というものをどんなふうに意識し、感情を動かせるのか、というのを思考して制作しています」 <画像>左から《ミュウツー》《ミュウ》。ミュウはあらゆる技が使えることから、ポケモンの先祖と考える学者も多いとされている。 この観点からミュウを捉えたら…?「(あらゆるポケモンの遺伝子を持っている)ミュウは、表面の皮膚情報自体があらゆるポケモンということなのかなと思い、そこからミュウの表面をいろんなポケモンで埋め尽くそうと考えました。ただ、ミュウは体長が40㎝と小さいんです。そのサイズにあらゆる遺伝子という表現をするのは情報過多で収まり切らない。そこで、体長2メートルあるミュウツーかなあと」