【40代、50代・薬と上手に付き合う方法⑤】その薬は本当に必要? 効く風邪薬は存在しない!?
抗生剤は万能薬ではありません!
風邪の特効薬はないということだが、「抗生剤は効かないの? 」と思った人はいないだろうか? 「細菌とウイルスはともに微生物ですが、大きさや構造がまったく違います。風邪は鼻や喉が微生物に感染することで起こりますが、その原因のほとんどがウイルスです。抗生剤は細菌には効きますが、ウイルスには効きません。ですから抗生剤は風邪には効きません。 なぜか日本には抗生剤信仰があるようで、医療機関で患者側が抗生剤の処方を要望する人も少なくないようです。 しかし、抗生剤はとりあえず飲んでいい薬ではありません。 抗生剤は細菌に効きますが、よい菌も殺してしまいます。特に腸内環境を健全に整えておくためには善玉菌が必要です。ところが抗生剤を1週間飲むと、そのよい菌まで減らしてしまうことがわかっています。 さらに抗生剤を飲み続けると、その薬が効かなくなる耐性菌が増えることもわかっています。そうなると、本当に必要なときに薬が効かなくなるので、抗生剤の乱用は避けることが重要です」
薬の処方を減らす賢い方法とは?
高齢になると、どんどん薬の種類が増えていくケースは少なくない。 「特に75歳以上(後期高齢者)になると、4人に1人が7種類以上の薬を飲んでいるというデータがあります。薬には必ず副作用があります。例えば、眠気や物忘れ、気分が沈むなど。特に6種類以上の薬を服用している場合は、こうした副作用が起こりやすいことがわかっています。 こうした場合には、この薬は本当に必要なのかを医師に相談することも必要です。医師にはきちんと医療を行う責任があります。その一方で、治療のガイドラインには薬の増やし方の指示はあるのですが、やめ時の記述がないことがあります。すると、医師のほうも、どのように減らしていくか迷うこともあるようです。 そんなときは、もしも体の調子がよくなっているのなら、『もう〇〇の症状はなくなっています』というように、改善していることを主張するといいと思います。 また、高血圧や脂質異常症の薬などは、数値が悪くなると服薬を医師からすすめられますが、これも薬に頼りすぎて、生活習慣の改善をしないのでは意味がありません。こんな場合は、薬はあくまでサポートであることを忘れてはいけません。 なかには服薬をやめることで命にかかわる病気もありますので、勝手にやめることはしないでください。医師ときちんと話し合って、納得したうえで薬を飲む姿勢がとても大切です」
【教えてくれたのは】 鈴木素邦さん 薬剤師。経営学修士(MBA)。「クラヤコンサルティング」代表取締役。城西大学薬学部非常勤講師。東京大学や慶応義塾大学などの教壇に立ち、多くの薬剤師を世に送り出す。薬局薬剤師の経験、多くの薬剤師を輩出した経験をもとに、お客様第一の薬局になれるような薬局向け経営コンサルティングを行う。研修講師としても、薬局経営者向け中心に講座を実施している。著書に『薬の裏側』(総合法令出版)など。 イラスト/いいあい 取材・原文/山村浩子