「ビタミンCで風邪予防は意味なし」論文が示した“意外な事実”とは【医師が解説】
毎年冬になると、空気の乾燥や湿度の低下などの理由から風邪が流行りやすくなります。こうした風邪を予防するために「ビタミンC」のサプリメントやドリンクを摂取する人も少なくないと思います。しかし、「ビタミンCを摂取しても、風邪は予防できない」と示された論文があることをご存知ですか? 今回は、久高医師に論文で示された内容を解説していただきました。 【イラスト解説】「ビタミンC」のヤバい“健康効果”
ビタミンCの風邪予防効果について言及された論文とは?
編集部: ビタミンCの風邪予防効果について言及された論文では、実際にどのような評価が示されたのでしょうか? 久高先生: 風邪は、最も蔓延している「ウイルス性上気道感染症」の1つで、咳、疲労感、発熱、喉の痛み、筋肉痛などの症状が数日から3週間以内にわたって持続するとされています。そもそも、風邪という用語は、複数のウイルスによって引き起こされる非特異的症候群を指しますが、最も頻繁に病原体となるのは「ライノウイルス」で、患者の30~50%に感染が認められます。 「ビタミンCを大量に摂取すると、風邪にかかりにくくなる」という俗説は、1970年代にライナス・ポーリングという科学者が発表した理論に由来しています。ポーリングは1954年にノーベル化学賞を受賞している人物です。当時、ポーリングが発表した論文では「ビタミンCを1日1000mg摂取することで、風邪の発生率を約45%減らすことができる。病気を予防して健康的に生活するためには、1日に少なくともビタミンCを2~3g摂取するのが適切」と示していました。その結果、アメリカでビタミンCサプリメントの売り上げは数年でほぼ倍増する影響を及ぼしました。しかし、同様の目的でおこなわれたほかの臨床研究では、その有効性を証明することはできず、それどころか非ランダム化比較試験や動物実験のヒトへの誤った適用に基づいて、ポーリングの考えを完全に否定する査読済みの論文も出てきています。 2020年10月に学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載された論文では、こうした背景から「ビタミンCの大量摂取は、風邪の予防には無意味である」と結論づけ、「日常的なサプリメントの摂取は正当化されない」とも言及しています。