【学生長距離Close-upインタビュー】新エースに成長した神奈川大・宮本陽叶「失速した箱根の借りは箱根で」
大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。42回目は、神奈川大の宮本陽叶(3年)をピックアップする。 【学生長距離Close-upインタビュー】トラックで活躍する日体大・平島龍斗「他校のエースと1区で勝負を」 これまでチームの浮上のカギとなってきたが、今年1月の箱根駅伝本戦では悔しさも味わった。その悔しさをバネにさらなる成長を続けている。 神奈川大の新エースが、ここまでの歩みや近づく駅伝シーズンへの抱負を語った。
“平塚に”悔しい思いを
神奈川大が躍動する時、その原動力を担ってきたのが宮本だ。宮本の1年時、チームは全日本大学駅伝に出て、箱根駅伝は看板を欠き予選会で次点の11位で思わぬ敗退。2年時、今度は全日本の出場にあと22秒08及ばなかったが、箱根駅伝予選会は7位で突破し本戦に返り咲いた。 神奈川大は今年1月の箱根駅伝本戦メンバーのうち7人が卒業。分厚い選手層を形成した学年が卒業した今、3年になった宮本がチームの先頭に立っている。 「失速した箱根の借りは箱根で。それにはその舞台に立つ権利を取らなくてはいけません。全日本も大事にしたい大会。2つの大会にまずは出場することを目標に、今年をスタートしました」 借りを返す場に掲げる箱根駅伝。宮本は“平塚”に、悔しい思いを置いてきている。 本戦出場がかなわなかった1年の時は、“平塚”で走路員を務めていた。「残り1km」のプラカード近く。「あと1kmだぞ!」。沿道からの声援がもっとも熱を帯びる場所で、それに応え、最後の力を振り絞る選手たちを目の当たりにした。 「あんなふうに、次の走者に向けて魂のラストスパートを、自分もするんだ」。 2年になり、予選会を突破。その思いを具現するチャンスを得た。予選会ではチーム3位、個人総合49位と貢献している。しかし、本戦では「軽い体調不良」(宮本)を抱えての出走。ウォーミングアップでは異変なく、「大丈夫」と確認して“平塚”をスタートした。 そこにちょうど、冷たい雨が降り出す。走り出したとたん、身体が冷えていくことがわかった。2kmでペースを守れなくなり、「信じられない速度、とんでもないタイムで・・・・・・。レース後に倒れたのも初めてでした」。低体温症だった。 全日本大学駅伝も、長距離区間で勝負することを想定している。「ハーフをしっかり走れる力をつけていく」。宮本は明確なテーマを持って2024年を走り出した。 「丸亀ハーフマラソン(2月)の前から、毎朝20kmをずっとやっていました。丸亀はそれなりに走れた(1時間2分14秒の自己新をマーク)のですが……」。 スタミナ作りへの意気込みは良かったが、身体がついていかなかった。身体に疲れが蓄積し、3月から5月はスランプに陥ってしまう。関東インカレ2部10000mでの不振は、不調の最中だったのだ。