義父母の介護のホンネ。明るくパワフルだった義母を変えた認知症。90歳の義父が、必死に家事をこなす<スーパーお爺ちゃん>に成長した
◆90歳目前で自立する義父 しかし、こんな悲しい状況ではあるが、希望もある。今まで半世紀以上も義母にすべて頼り切りだった義父が、90歳間近にして自立したのである。 信じられないかもしれないが、義父は掃除、炊事、洗濯など、ヘルパーさんの力を借りつつも、すべて自分で行うようになったのだ。 自分のためにやっているのではない。彼はそれを、義母のため、そして私のためにやっている。もしかしたら、8割ぐらい、私に迷惑をかけまいと必死でやっているのかもしれない。 長い間、なぜ義母は普通に暮らせなくなったのかと、文句とも、怒りともつかない口調で言い続けた義父の口から、そのような言葉は一切出なくなった。義母に何を言われても、穏やかに、頷くことが出来るようになった。 ただのお爺ちゃんだった義父は、確かに今、スーパーお爺ちゃんに成長しつつある。義母のデイサービスの日、彼女の着替えや薬を準備し、バッグに詰めている義父の後ろ姿を見て、私は感動した。 人間は90歳になっても変わることができるのだ。そのままがんばってくれ! 義母が認知症になってしまったのは悲しいことだし、義父にとっては、これまでの長い結婚生活がすべて壊されたかのようなショックでもあっただろう。 しかし、時間をかけて徐々にそれを受け入れ、自分を変えた義父を私は尊敬している。 私に迷惑をかけないように、義母が苦労しないように、90歳の老体に鞭打つように必死に家事をする義父を見ていると、本当の優しさを教えてもらったような気持ちになる。 ※本稿は、『義父母の介護』(新潮社)の一部を再編集したものです。
村井理子
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