大腸がんの原因となる「潰瘍性大腸炎」をご存じですか? 初期症状や予防法も医師が解説!
「潰瘍性大腸炎」という病気をご存じですか? 若いうちに発症することが多い難病です。今回は、潰瘍性大腸炎の症状や治療法、放置するリスクなどについて「中目黒アトラスクリニック」の伴野先生に解説していただきました。 【イラスト解説】「大腸がん」の前兆となる初期症状4選 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
潰瘍性大腸炎の初期症状
編集部: まず、潰瘍性大腸炎について教えてください。 伴野先生: 潰瘍性大腸炎は、直腸から大腸全域にわたって、連続的に炎症が起こる病気です。症状が重症化すると、大腸にたくさんの潰瘍を形成するために、このような病名がついています。 編集部: なぜ、そのような状態になるのですか? 伴野先生: 大腸には無数の免疫細胞や腸内細菌があり、体に入ってきた異物を攻撃する「免疫」に深く関与しています。この免疫がなんらかの原因で暴走し、自分の腸管を攻撃してしまうのです。なぜ自分の組織を攻撃してしまうのかについては、現時点では明確に解明されていません。ただ、もともとの遺伝的な要因だけではなく、後天的なストレスや腸内細菌などが要因となっていることがわかってきています。 編集部: 潰瘍性大腸炎の症状を教えてください。 伴野先生: 初期は下痢や腹痛が主な症状で、それ以外の症状がほとんどありません。「最近、お腹の調子が悪いな」くらいに思って様子を見る人も多いのですが、悪化してしまうとさらに便がゆるくなり、粘液便や血便、強い腹痛、さらには下血や発熱が生じます。そうした状態が続くと体力が奪われることに加え、出血が続くことで貧血になり、「倦怠感」「体重減少」「ふらつき」などの症状も表れます。
潰瘍性大腸炎を放置するとどうなる? 潰瘍性大腸炎の検査や治療は?
編集部: 潰瘍性大腸炎を放置するとどうなりますか? 伴野先生: 適切な治療をせずに放置すると、大腸へのダメージが蓄積し、やがて「大腸がん」を生じることがあります。さらに、場合によっては「結節性紅斑」や「壊疽性膿皮症」などの皮膚症状、「関節炎」や「ぶどう膜炎」などの腸管以外の臓器にも影響が出てきます。そして、重度の炎症が持続してコントロールができなくなると、大腸摘出手術となる可能性もあります。 編集部: 潰瘍性大腸炎の検査は、どのようにおこなわれるのですか? 伴野先生: 最初に診断をつけるには、問診から血液検査、便検査、大腸カメラをおこないます。診断後は、定期的に大腸カメラで炎症を評価します。最近は、血液や便からも炎症を評価することができるようになりました。大腸カメラと比べて非侵襲的な検査方法として期待されています。 編集部: 潰瘍性大腸炎の治療は、どのように進められるのでしょうか? 伴野先生: 薬による治療が主ですが、病気のコントロールが難しい場合や大腸がんを合併した場合は、大腸を全て切除する外科治療が必要なこともあります。ただ現在は、薬の進化により手術することは減り、通院だけで治療が継続できるケースが多くなりました。昔は「とにかく大腸を摘出しなくて済むように」というのが治療のゴールでしたが、現在は「それぞれの生活を維持しながら、QOLを損なわないようにする」ことが主眼となっており、潰瘍性大腸炎の治療は大きく進歩したと言えるでしょう。 編集部: どのような薬が処方されるのですか? 伴野先生: 一昔前は薬の選択肢があまりなく、炎症症状をコントロールできずに入退院を繰り返してしまうこともありましたが、最近は薬の種類が増え、それぞれにあった薬を使いながら安定した状態を保てるケースが増えてきています。潰瘍性大腸炎の基本薬には、5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)をはじめ、ステロイド剤、免疫調整剤、抗体製剤、JAK阻害剤、カルシニューリン阻害剤など、様々な薬剤が保険適用となっています。