どうなるNext GIGA【1】GIGAスクール構想の学力は上がったのか
ICT活用の効果は測りにくい
もう一つ、報告書の中で強調されている点が社会経済的背景(SES:Socio-Economic Status)と主体的・対話的で深い学び(課題解決型の学習)との関係だ(図5)。「低いSES*でも、主体的・対話的で深い学びに取り組んだ児童・生徒は、高いSESで取り組めていない者よりも各教科の正答率が高い」と結論付けている。ICTが課題解決型の学習を促進するとすれば、SESが低い子供たちを支える力になるということだ。経済格差が広がりつつあるとされる日本において、ICT活用はその差を埋める方策の一つになり得る。 * 調査では「家にある本の冊数」をSESの代替指標として利用した ICT機器が子供たちの学びを支援する効果は、「効力感」に関する調査にも表れている。端末やインターネットがあることで、自分のペースで学習を進められ、分からないときはすぐに調べられる。堀田氏は「ICTによって学ぶことへのアクセシビリティが確保され、子供たちの安心感につながる」と分析する。 調査結果を見る限り、ICTを活用すれば教科の学力が上がるわけではない。だが従来の学力だけでは、不確実で不連続な社会の変化を乗り越えられないことは、学習指導要領が目指す学びの内容を見ても明らかだ。 教職員支援機構 理事長で中央教育審議会の会長を務める荒瀬克己氏は、「テストで測れるのは学んだ力だが、学力にはそれに加えて学ぶ力と学ぼうとする力もある。学ぶためのスキル的なものも含めて、ICTの活用は役に立つ」と話す。 子供たちの学ぶスキルと意欲を向上させ、学習指導要領が目指す学びや中教審答申にある「令和の日本型学校教育」を実現するために、ICTは欠かせないものになりつつある。それこそがGIGAスクール構想第1期の成果だろう。 初出:2024年10月14日発行「日経パソコン 教育とICT No.30」
文:江口 悦弘=日経パソコン