どうなるNext GIGA【1】GIGAスクール構想の学力は上がったのか
ICTの活用で子供たちの学びは変わったのか
ICT活用教育に懐疑的な人たちからは、「コンピューターを使って学力が上がるのか」という疑問が呈されることがあった。GIGAスクール構想の成果が子供たちの学力向上であれば、保護者をはじめとした国民の理解は得やすい。ICTと学力の関係を、2024年7月に公表された「令和6年度全国学力・学習状況調査」(学調)の結果で確認しよう。 国立教育政策研究所の報告書では、「課題の解決に取り組む学習活動」を「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善」であると見なし、「そのような学習場面でのICT機器の活用頻度が高い」と指摘する。 これについて、東京学芸大学教職大学院 教授の堀田龍也氏は、「学習指導要領で目指す学びのための授業改善にはICT機器が必要だったということ」と説明する。文部科学省 初等中等教育局学校情報基盤・教材課長の寺島史朗氏も、「課題の解決に向けて話し合い、まとめ、表現するような学習活動をICT抜きでするのは大変。これまで先生がやりたくても十分にできなかったことが、ICTでできるようになった」という見解だ。
肝心なのは授業の改善
報告書ではICTと学力も関連付けている。図2の集計に「各教科の正答率」も加えた3重クロス集計をすると、ICT機器の活用頻度が高いグループは正答率も高いと分析している。 確かに、課題解決型の学習活動(PBL)の頻度が高いほど正答率が上がる傾向は見られるが、同じPBLの頻度で比較すると、ICT機器を使うか否かで生じる差は小さい。つまり、正答率の差はICTではなく、PBLの有無と関連性があると考えるのが自然だ。堀田氏も「カギはICT機器を使う使わないではなく、主体的で対話的で深い学びの授業ができているかどうかだ」と指摘する。 これらをまとめると、ICT活用の頻度に関わらず、主体的・対話的で深い学びのための授業改善としてPBLを実施した頻度が高いと、教科の正答率が高くなる傾向が見て取れる。ただし、ICT活用とPBLの関係を見ると、ICT機器があることでPBLを実現しやすくなっている可能性がある。