夫や当時者の父親からの相談がくることも。不妊カウンセラーに聞く、不妊治療に取り組む人たちの現状
不妊治療はまだまだ仕事との両立は難しいし、地方格差が大きいことも課題
――情報が多いぶん、不安になっている人も増えているんですね。 笛吹 そうなんです。不妊治療が保険適用になって、不妊治療自体の認知度が上がって、そういう意味では以前より治療がしやすくなってよかったと思っています。費用面で救われている人もとても多いと思います。でも、不妊治療はもともと自費診療から始まったものだから、各クリニックの独自性もとても強いんです。それが保険診療になったので、情報が錯そうしがち…。保険診療になってから2年たつのに、まだまだ保険でできること・できないことが認知されていないな…と感じることが多いです。 正直なところ、私も保険診療になることで、治療がある程度標準化されて、よりわかりやすくなるのかな…と期待していたんです。でも、結局、各クリニックが「この治療はうちは保険診療ではやらない」といような独自のやり方を出しているのが現状。たとえば、「うちは保険診療では(卵巣刺激は)低刺激のみで、(胚移植法は)新鮮胚移植しかやりません」というクリニックもあるんです。患者さんにとっては、わかりにくいし、クリニックを選ぶのも難しいですよね。 ――ほかにも、課題に感じていることなどはありますか? 笛吹 あとは、相変わらず、不妊治療と仕事の両立は難しい…と感じることが多いですね。 たまたまコロナ禍をきっかけに在宅勤務がしやすくなったから、在宅勤務ができる人は、不妊治療のクリニックに通う時間も調整しやすくなってはいるけれど、在宅勤務ができない人は大変なまま。会社の制度がまだ整っていないから、退職を選択するしかない。 不妊治療を行う場合の支援制度を取り入れている会社もありますが、東京の大手企業などが率先して取り入れていることもあって、制度が東京向きで地方では当てはまならい部分もあります。そもそもデスクワークの人たちが基準だから、デスクワーク以外の人は難しかったり…。 東京だったら近くにクリニックがあることが多いけれど、地方の人はそうはいかない。私もそうでしたが、クリニックに行くために、遠征する必要があることも。そうなると、東京と同じ制度では全然たりないな…と。 不妊治療の地域格差もとても感じます。たとえば、関西の日本海側、京都北部や兵庫北部には、不妊治療クリニックがほとんどないんです。そうなると、京都や大阪の中心地まで出ないといけない。 京都や兵庫は不妊治療のクリニックが多いイメージがあるから、「困っていないよね」と思われるけれど、同じ都道府県でもクリニックがない地域の人は本当に大変な思いをして通院しています。東北地方や北海道なんかも、困っている人が多いと思います。 例えば愛知と東京にあるクリニックで、体外受精までの基本的な検査や説明などは地方の連携施設に通院し、採卵と移植だけ東京のクリニックへ…というようなシステムを始めているところも。地方格差や通院する人の負担を減らすためにも、このような取り組みがもっと増えてくれたらいいのですが…。 会社の制度としても、たとえば、その地域のクリニックの数や距離なんかも考えた年間休暇数を考えてもらえると助かりますよね。あと、会社側にも、「どこのクリニックでも同じ治療が受けられるわけではないし、治療の方針によってはクリニックを転院することも多い」ということを理解してもらえるといいですよね。「近くのクリニックでも同じでしょ?」と思われると、遠方通院のための休暇などはなかなか理解してもらえないと思うので。