[国スポ少年女子]「チームのまとまりは完璧」。過去2大会悔し涙を流した静岡県が悲願の初優勝
[9.24 国スポ少年女子決勝 兵庫県 0-2 静岡県 SAGAサンライズパーク SAGAスタジアム] 【写真】「めっちゃカメラに抜かれてた」「それにしてもかわいい」“勝利の女神”が再び降臨 24日、「SAGA2024第78回国民スポーツ大会」サッカー競技少年女子の部決勝がSAGAサンライズパーク SAGAスタジアムで行われ、兵庫県と静岡県が対戦。2-0で勝利した静岡が初優勝を果たした。 サッカー競技に少年女子の部が発足した2年前の栃木国体は決勝で東京都に敗れ、準優勝。昨年の鹿児島特別国体は3位で終わっていたため、静岡の日本一にかける想いはどこよりも強かった。渡邊千春監督(桐陽高)をはじめとしたスタッフは、栃木国体とほとんど同じ顔触れ。リベンジを達成した指揮官は「このスタッフで優勝したかった。やっと優勝できたなという感じですね」と笑みを浮かべた。 目標を日本一に定めていたため、前日の準決勝で千葉県を撃破しても気を緩めていなかった。「選手に行けるんじゃないかという雰囲気が出ていたので、『そんなに簡単じゃない。兵庫県も凄く良いチームだし、速い選手が多い』と伝えていた」と話すのは渡邊監督で、選手には決勝に挑むにあたって兵庫の分析を選手にしっかり落とし込んでいたという。 一つは相手のロングボールに対する対策で、MF兵庫彩夏(常葉大橘高1年)はこう振り返る。「相手が蹴ってくると分かっていたので、セカンドボールを拾わなければいけないし、その前に蹴らせてはいけないと思っていた。蹴られてはいたけど、セカンドボールをちゃんと拾えていたから、試合の入りは自分たちのペースで入ることができた」。 もう一つのポイントはサイドでの攻防。FW鈴木梨花(神戸弘陵高2年)とMF奥本愛生(姫路女学院高2年)という俊足を両翼に並べる兵庫県のサイドアタックを封じつつ、自らもサイドから仕掛けて見せ場を作ろうと考えていた。展開力に長けたMF朝賀咲月(藤枝順心高1年)のサイドチェンジを入れながら相手を揺さぶると、前半11分には先制点が生まれる。 自陣左からMF高松希(藤枝順心1年)に入れた対角のボールは相手にサイドラインへと出されたが、スローインを素早くMF森くるみ(藤枝順心1年)、MF梅澤芙綾(藤枝順心1年)と繋いで中にパス。最後は兵庫が冷静にゴールネットを揺らした。静岡は均衡を崩すと、35+1分にも梅澤のパスからFW松井さつき(常葉大橘中3年)がゴール。2-0で前半を終えた。 対する兵庫が前半に放ったシュートはわずか1本。MF川合千暁(日ノ本学園高1年)は「先制点を取る方が(試合運びが)楽になると思っていたので、どうしても前に焦ってしまった」と振り返るが、ハーフタイムに修正。後半は中央をコンビネーションで崩す場面が増えていく。 後半3分にはクリアボールから左を抜けた鈴木のパスから、FW山田愛実(神戸弘陵高2年)がゴール前に侵入。6分にはDF細田若那(日ノ本学園高1年)が対角に入れたボールから奥本がゴールを狙ったが、無失点のまま勝ち上がってきた静岡の堅守を崩せない。「選ばれた責任と覚悟だよと言っていた。みんながそれをちゃんとやってくれたのかなと思います」。そう振り返るのは渡邊監督で、そのまま2点リードを保った静岡が勝利した。 昨年までの静岡はJFAアカデミー福島の選手を中心としたチーム編成をおこなっていたが、JFAアカデミー福島の拠点が福島県に戻った今年からは静岡県内の高体連に所属する選手を中心にチーム作りを進めてきた。普段の所属が違う上に中学生も3人いるため、東海大会は「コミュニケーションを取るところからのスタート」(渡邊監督)。当初はピッチ内外で学校ごとに分かれる場面が多く見られたというが、活動を続けるうちに打ち解けていった。 川合はこう話す。「コーチに『もっとグイグイ行って、話をしなよ』と言われた。そこからみんなで仲良くなって、今は部屋でもうるさい。チームのまとまりは完璧だと思います」。様々なチームの選手を招集できたのは所属チームの協力もあってこそ。直前合宿をおこなうなど協会のサポートも大きかった。そうしたチームに携わった多くの人たちを含めた“チーム静岡”として掴んだ悲願の初優勝だった。 (取材・文 森田将義)