60歳ベテランから12歳新人まで 女子プロレスの今【1】ジャガー横田、井上京子に聞く
リング上で若い選手たちに直接伝えているものとは
しかし実際に若い選手たちとリングで肌を合わせ、試合を通して伝えていることがある。それは何か。 「魂ですね。体型や使う技によって表し方は違いますが、戦う姿勢=ハートが入るだけで試合の見栄えは変わります。私たちはパフォーマンスもしているけれどお遊戯をしているわけではなく、基本には戦いがあるんだよと。ルールに基づいた戦いがプロレスなんだよっていうことを一人ずつが意識していないと。そこは伝えているつもりです」
井上京子「世界一強い女」を目指したワケ
ディアナを創設し代表も務める井上京子は昭和も終わる頃1988年に全女でデビューし平成の女子プロブームを駆け抜けた。 「自分が全女に入ったころプロレスは強くて大きくて超人的じゃないとできないイメージで、とにかく世界一強い女になりたかったんです。小学生のころ男子と喧嘩しても負けなかったのが中学になって負けてしまったんですよ。すっごく悔しくて『もう負けたくねぇ』って。当時のレスラーは背が高くて体重も100キロとか超えて『うわぁ~、すげぇ~!』と。でも時代が流れていく中で、ブル中野さんが全女の25歳定年制をなくしてくれたこともあって、いろんな選手が女子プロを目指せるようになったんです。今は本当に可愛い子が多い。私にもこの体格で可愛い顔がついていたら世界トップになってたかな」 そうジョークを放って爆笑する井上だが、最近プロレスに入門する子についてこう語る。 「自分が入ったときは応募総数3600人なんて時代でしたが今は年間に1人か2人。会場で試合を観て…ではなく、お母さんがプロレスファンだとか、YouTubeで観て、という子が多いかもしれませんね」
本気のプロレス、本当のプロレス、本物のプロレス
ディアナでは基礎となる練習メニューは全女時代のメニューを踏襲しているとか。 「私がデビューしたときと同じメニューを今やっています。球技も野球、バスケ、バレー、いろいろありますがプロレスも良い悪いじゃなくてさまざまなスタイルの団体があって、今のお客さんはたくさんある中から選べて幸せだなとも思うんですが、共通しているのはどの団体も本気なんですよね。その中でも私はディアナを立ち上げたとき『本気のプロレス、本当のプロレス、本物のプロレス』を掲げて最強で本物をやりたいっていう思いが強かったんです。まず道場があって、リングに上がる以上は練習を重ね強靭な身体を作り上げて、もちろん受け身がしっかり取れなくちゃいけない。時代が変わっても本気でプロレスをやっていればお客さんに伝わるところは絶対あると思うんです。みんながパッと見たときにアイツ強そうだなとか、かっこいいなって思われる子たちがリングに上がるのがディアナ。だからみんなには強くなってもらいたいし、私も引退するまではずっと強くありたい。そしてこれは私が引退してもずっと続けて行ってもらいたい部分です」 【2】へ続く