日銀・黒田総裁会見1月18日(全文3完)金融政策の効果は十分だが、2%目標は未達成
引き続き粘り強く続けていく
その意味で、明らかに日本経済の回復を助けてきたということは言えると思います。金融政策であれなんであれ、効果というためには何と比較するかっていうことが必要でして、有り得ないような政策と比較しても意味がないわけですので、実際に有り得たほかの金融政策と比べてみてどうかといわれたら、紛れもなく経済の回復を助け、デフレからの脱却を助け、企業収益を改善し、雇用も大幅に伸びてきているわけですので、そういった意味で効果が十分あったと思いますが、残念ながら2%の物価安定の目標は達成されていないということでありまして。だからその意味では引き続き粘り強く続けていくということになると思います。 出口っていうのは先ほど来、申し上げているように、2%の物価安定目標が実現される、あるいはされそうになるという時点になれば当然、政策委員会で出口に関する議論も行い、適切な市場とのコミュニケーションを図るということになると思います。それ自体が何か非常に難しいということはないと思います。むしろ問題はまだ、残念ながら2%に達してない。展望レポートの最終年度でも、2023年度でも1.1%っていうようなところですので、まだ出口について議論するのは時期尚早であると思います。出口について議論し、コミュニケーションするっていうこと自体が何か非常に困難だということはないと思います。
08年と現在では事情が違うのではないか
東京新聞:東京新聞の皆川です。先ほど総裁、コストプッシュ型のインフレは長続きしないと、2008年の動向を引き合いにおっしゃいましたけれども、2008年と現在では事情が違うのかという観点からの質問です。08年当時なんですけれども、資源高の原因としては、台頭する新興国の需要の急増ですとかドル安に伴う投機マネーの流入ですとか、そういったことが主因だったのではないかと思います。他方で今回の供給制約というのはご承知のとおり新型コロナウイルスが主因でして、08年を引き合いにコストプッシュ型のインフレが長続きせずに終わると、そのように判断されている根拠をもう少し伺えますか。 黒田:そこは当然のことですけれども、今回の資源価格、特にエネルギー価格の上昇についてはさまざまな要因があると思いますが、なんといっても一方で欧米を中心にコロナ感染症からの回復が極めて著しく、需要が急増したというところで、そういうものに対する、特に天然ガス、石炭、あるいは石油といったエネルギーの供給が一部のボトルネック等で追い付かないということもあって上昇したということですが、これ自体、例えば欧州における天然ガスの価格上昇にしても、これがずっと続くとはほとんどの人は考えてないし、先物価格の動きなどを見ても垂れていくということになってまして、これが一時的でないという人はほとんどいないと思います。 ただ、それがその他のいろいろな状況と絡んで賃金あるいはその他の消費財等の価格上昇に結び付いていくとインフレになりうるということで、商品価格自体が何か一時的でないということではないと思うんですね。そういう面から見ると、確かに先進国の一部では単に資源価格、エネルギー価格が上昇しているだけでなく、賃金が上昇し、その他各種の財貨・サービスの価格が上昇してるっていうことが起こっている国があるわけでして、そういった国、新興国の中にもそういう国ありますけども、そういう国はすでに金利を上げたり、あるいはこれから上げようというようなところもあるわけです。 他方で、わが国の場合を見てみた場合にはそういった状況にないということは明らかですので、何かこの資源価格の上昇が2008年のようなことでなくてまたずっと続くとか、あるいはそれがわが国の消費者物価の上昇率、幅広い、そして持続的なものをもたらすという可能性というのは今のところ見当たらないということだと思います。 どうぞ。